【10月17日 AFP】タイを襲った記録的な洪水で、東日本大震災によって打撃を受けたグローバルサプライチェーン(部品調達・供給網)が再び動揺している。

 約300人の死者を出した今回の洪水では、国内の水田の1割に被害が出たほか、首都バンコク(Bangkok)北部で主な幹線道路が通行止めとなり、タイ経済を支える輸出産業の工場も多数被災した。

 タイは東南アジアの自動車産業の一大拠点だが、バンコク北部にある基幹部品を製造する広大な工業団地群が冠水。トヨタ自動車(Toyota Motor)、ホンダ(Honda Motor)、いすゞ自動車(Isuzu Motors)、米フォード・モーター(Ford Motor)はタイでの組み立てを全面中止した。生産への影響は数千台規模とみられる。

 エレクトロニクス産業にも影響が出ている。米ハードディスク駆動装置(HDD)メーカーのシーゲイト・テクノロジー(Seagate Technology)や米ウェスタン・デジタル(Western Digital)などは減産の恐れがあると警告。集積回路メーカーのオン・セミコンダクター(ON Semiconductor)やマイクロセミ(Microsemi)、ハイテク大手ニコン(Nikon)もタイ工場での生産を一時中止し、キヤノン(Canon)はインクジェットプリンターの生産拠点を一時的にベトナムに移すと発表した。

■特に日本の自動車メーカーに打撃

 タイ工業連盟(Federation of Thai Industries)のPayungsak Chartsutthipol会長はAFPの取材で、洪水の影響はタイ国外にも広がっていると指摘。「タイ国内工場の多くは海外工場の部品供給元であるため、海外工場にも影響が出ており、日本の(東日本大震災の)津波で影響を受けた時と似た状況だ」と語った。

 バンコク上流のアユタヤ(Ayutthaya)にあるホンダ工場では、工場の外に並べてあった車両がほぼ全て水没した。トヨタも14日、タイでの生産一時中止を少なくとも10月22日まで延期することを発表している。

「2011年は日本の自動車産業にとっても、自然災害の規模としても、最悪の年だ。東日本大震災で2か月近く工場閉鎖を余儀なくされ、今度はタイの洪水で生産がストップした」と、自動車業界紙オートモーティブニュース(Automotive News)のアジア編集者、ハンス・グレーメル(Hans Greimel)氏はいう。「タイは、日本の自動車産業の主要生産ハブだ。特に今は日本国内での減産を補うため海外工場に頼っている状態で、タイでの生産停止は打撃になるだろう」

 タイ商工会議所大学(University of the Thai Chamber of Commerce)の経済ビジネス予測センターでは、農業や観光、商業サービスも含め、タイ経済全般に今回の洪水が及ぼす被害総額を、年間国内総生産の1.3~1.5%に上る1500億バーツ(約3800億円)と見積もっている。

 被害がバンコク市内まで及べば、損失額はさらに拡大するが、市当局者は市内への大規模浸水は避けられると自信を示している。(c)AFP/Daniel Rook

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