【9月22日 AFP】会員制で自動車の共同利用サービスを提供するカーシェアリング会社の北米最古参、カナダのコミューンオート(Communauto)は8月中旬、日産自動車(Nissan Motor)の電気自動車(EV)「リーフ(Leaf)」50台を導入し、EVカーシェアリング事業を試験的にスタートした。

 カナダで人気を集めつつあるカーシェアリングは、従来のレンタカーとは違い、1時間単位で車をレンタルできる。モントリオール(Montreal)を拠点とするコミューンオートの料金設定は格安で、会員登録料を払えば、1回のレンタル料は燃料代込みで1時間約2ドル(約150円)だ。

■試乗機会増加でEV人気上昇

 EVは登場したばかりの頃、なかなか消費者に浸透しなかったが、購入リスクの少ないカーシェアリングで試乗する機会ができたことで、人気を大きく伸ばしている。新たにEV支持者になったというジョルジュ・シャルルボワさんは、「車は1台持っているけれど、EVを試してみたくてコミューンオートの会員になったんだ」と語る。

 コミューンオートの何とも大胆なEVカーシェアリング事業は熱狂的な人気を呼んでいるが、もちろんマイナス面もあると、サービスを頻繁に利用しているウェブデザイナー、ジャンフランソワ・ボーシャンさんは言う。「ガソリンスタンドでは充電できないから、前もって計画を立てておかないとならない」のだ。コミューンオートでは、電力公社ハイドロケベック(Hydro-Quebec)と提携してモントリオール市内各地の駐車場に充電施設を整備し、この問題を緩和している。

 コミューンオートのブノワ・ロベール(Benoit Robert)最高経営責任者(CEO)はAFPの取材に対し、同社のサービスに環境対応車(エコカー)を加えることができて非常に喜んでいると語った。「わが社は既に、住民のガソリン車使用率の抑制に大きな影響を与えており、それによって温室効果ガスの排出量削減に直接的に貢献している」

■業界またぐ相乗効果、潜在購入層にアピール

 モントリオール工科大学 (Ecole Polytechnique de Montreal)のカトリーヌ・モランシー(Catherine Morency)教授はこの新事業について、カーシェアリング業界とエコカー業界に相乗効果をもたらすマーケティング上の大成功例だと称賛している。

 このマッチングは、エコカーを製造するメーカーにとってもプラスだ。EVの潜在的な購入者である幅広い層のレンタルユーザーが、実際に購入する前にEVに試乗できるからだ。しかし、両業界の進路は、長期的目標という点では袂を分かっている。メーカー側はより多くの新車を販売したいが、コミューンオートではレンタルのローテーションに回す台数を抑えたいからだ。

 自動車コラムニストのデニス・デュケ(Denis Duquet)氏は、カーシェアリングによって少なくとも一部のドライバーがEVに乗り換え、EV需要を押し上げることになるだろうと予想する。「生産台数が増え、価格が下がれば、コミューンオートでEVを利用した人たちがゆくゆくは自分でEVを購入することはあり得るだろう」(c)AFP/Guillaume Lavallee