【8月26日 AFP】米アップル(Apple)は24日、最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏が辞任し、ティム・クック(Tim Cook)最高執行責任者(COO、50)がCEOに就任すると発表した。ジョブス氏は会長としてとどまる。

 クック氏は一時は不振に陥ったアップルのV字回復をけん引してきた人物だ。1960年11月に米アラバマ(Alabama)州で、造船所で働く父と専業主婦の母の間に生まれた。アラバマ州のオーバーン大学(Auburn University)で経営工学を学んだ後、デューク大学(Duke University)で経営学修士号を取得した。

 米コンピューター大手IBMのパソコン部門に12年間勤務した経験もある。コンパック・コンピューター(Compaq Computer)で約半年間働いた後、1998年4月にアップルに入社した。内紛でアップルから離れていたジョブズ氏が、経営不振に陥っていた同社に戻って間もない時期だった。

 アップルを苦境から時価総額で世界トップクラスの企業に導いたジョブズ氏に脚光が集まる一方、専門家たちはクック氏の事業手腕がアップルV字復活の鍵だったと指摘する。

 クック氏は、iPod、iPhones、iPad、マッキントッシュ(Macintosh) から上がる利益を拡大するため、製品在庫を積み上げないよう外部メーカーに製造を委託し、流通を調整した。製造コストを下げて採算性を改善するために、部品調達についても巧みに交渉した。アップルのリテール戦略も立案し、新たに立ち上げた実店舗による販売は世界で大きな成功を収めた。

 アナリストのカルミ・レヴィ(Carmi Levy)氏は「ジョブズ氏には熱狂的な信奉者がいてマスコミの関心も大きく、ジョブズ氏に魅了されてまだ見てもいない新製品を買いたがる消費者が大勢いたが、物静かなクック氏は舞台裏に立って組織がスムーズに動けるように維持し、ビジョンを実現するタイプの人物だ…クック氏の業績はそれほど脚光を浴びていないが、それがアップルの現在と将来にとって重要でないということではない。むしろ絶対的に重要だ」

 バークレイズ・キャピタル・エクイティー・リサーチ(Barclays Capital Equity Research)は投資家向けレポートで、ITバブル後にアップルのサプライチェーンの合理化を成功させたクック氏は、ジョブズ氏が築いた文化を守っていくだろうと分析した。クック氏も25日にアップルの従業員に宛てたメールで「アップルは変わらないということに確信を持って欲しい。私たちは、スティーブが作った世界に比類のない企業とその文化を守っていく。それが私たちのDNAだ」と述べている。(c)AFP/Glenn Chapman