【8月12日 AFP】東アジアを席巻した韓国のK-POPが、次は欧州進出を目指している。インターネットでK-POPグループの映像を続々と流し、地理的に遠く離れた国の人たちの心をつかもうという戦略だ。

 この10年あまりでK-POPは、日本、中国、東南アジアで揺るぎないファン層を築いてきた。これらの国々で、ピ(Rain)や東方神起などのアーティストは絶大的な人気を確立。コンサートはファンの熱気であふれ、ヒットチャートの上位にもK-POPの曲が顔を出す。

 いわゆる韓流ブームにのって、2002年には600万ドル(約4億6000万円)だったK-POP関連の外貨収入は、2009年には3130万ドル(約24億円)にまで膨れ上がった。

 海外におけるK-POPの成功は、インターネットからの楽曲ダウンロードでCD売上げが落ち込み国内市場が縮小の一途をたどり、海外進出の必要に迫られたという背景がある。韓国音楽業界が新たな生き残り戦略として選んだのが、インターネットを利用して海外のファンの心をつかもうという計画だ。

■パリのファンも韓国語で大合唱

 韓国最大手の芸能事務所、SMエンターテインメント(SM Entertainment)は2009年、動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」に公式チャンネルをオープン。ミュージック・ビデオやコンサート映像など専属アーティストの映像を流している。

 さらに、欧州や米国の専門家に作曲や振り付けを依頼し、世界各国の音楽ファンにアピールするため、アジア各地で10代の少年少女たちを発掘している。

 仏パリ(Paris)で6月に開かれたSHINee(シャイニー)、スーパージュニア(Super Junior)、少女時代などの人気グループが登場するコンサートは、2公演ともチケットは売り切れ、合わせて1万4000人の熱狂的なファンが、出演アーティストの歌を韓国語で合唱した。

 「ヨーロッパのファンたちの反応には、全く驚かされた」SMエンターテインメントの金英敏(キム・ヨンミン、Kim Young-Min)代表は言う。「これで欧州市場に飛び込む自信がついた。一歩ずつだけどね」

■ネットで世界にファンを獲得

 金代表はAFPとのインタビューで、ネットに所属アーティストの作品を流すことは、世界的な大手音楽レーベルの多くは著作権保護の面でリスクが大きすぎると考えているが、「私たちが世界各地で短期間のうちにファンを獲得する上で力になった」と述べた。

 SMエンターテインメントのような大手芸能事務所は、将来のスター候補となる若者の発掘から楽曲の製作、アーティストのスタイルの構築(現在の主流はヒップホップやエレクトロニクス系のダンスチューンだ)やキャリアの管理まで行う。
 
 まるで工場の組立てラインのように、ロボットのように歌って踊る似たような10代のアーチストを次々と送り出す手法には、批判的な声も少なくない。こうしたグループのメンバーは、言葉の一字一句から一挙手一投足まで、事務所に前もって指示されている。

 金代表は、K-POPアーティストの多くが同じような外見で同じような楽曲を歌っているように見えるかもしれないと認めつつ、SMエンターテインメントは、今後も新たなK-POPアーティストを開拓していくと話す。「われわれは、最善を尽くして作品を提供する新しい扉を開いたばかりだ。SMエンターテインメントの音楽を気に入ってくれた人たちは、他のジャンルの音楽も聞くようになるだろう。例えばロックとかね」(c)AFP/Jung Ha-Won