【6月30日 AFP】(写真追加)中国の2大都市、北京(Beijing)と上海(Shanghai)を結ぶ高速鉄道が30日、正式に開業した。北京~上海間(1318キロ)を5時間未満で結び、同路線の年間輸送能力はこれまでの2倍になる。中国では公共交通網の混雑が大きな問題となっており、高速鉄道開通で混雑の緩和に期待がかかる。

 当初予定より1年前倒して、翌7月1日の中国共産党創立90周年記念日に合わせた新しい高速鉄道の開業式典は、北京南駅で行われ、温家宝(Wen Jiabao)首相が開業を宣言。1番列車が午後3時(日本時間午後4時)に上海駅へ向けて出発した。

■期待される経済効果

 2209億元(約2兆7000億円)を投資して開発された高速鉄道について、市場調査会社IHSグローバルインサイト(IHS Global Insight)のアナリスト、Ren Xianfang氏は、沿線への波及効果で中国沿岸部の経済発展を大いに刺激するだろうと予測する。

 遅延や欠航が相次ぐ空の便から旅客を奪う可能性も指摘されている。北京~上海間の高速鉄道料金が片道410~1750元(約5100~2万2000円)なのに対し、航空料金は約1300元(約1万6000円)。航空会社の間では、高速鉄道の開通に対抗して値下げの動きが見られ、報道によると中には鉄道の最低価格を下回るため65%も値引きした例もあるという。

 一方で、運輸・建設セクター専門のコンサルティング会社クレビー・チャイナ(Clevy China)のフレデリック・カンパニャック(Frederic Campagnac)ゼネラルマネージャーは、高速鉄道との競争を通じて航空業界にも遅延が減るなどの好影響が出るだろうと見ている。

■汚職で安全性への懸念も

 高速鉄道の建設が始まったのは2008年4月。中国は高速鉄道網の整備に力を入れており、高速路線の総延長は2010年末時点で8358キロに上っている。12年までには1万3000キロに、20年までに1万6000キロまで伸ばす計画だ。

 一方で、巨額の建設費は汚職の温床ともなり、安全性とコストに対する懸念が高まっている。

 今年3月、建設会社と複数の個人が北京~上海高速鉄道の建設費から1億8700万元(約23億2600万円)を流用していたことが明るみになった。これに先立つ2月には、劉志軍(Liu Zhijun)前鉄道相が高速鉄道網の契約に絡み、数年間にわたって計8億元(約100億円)のリベートを受け取っていたとして解任された。

 こうしたなか中国鉄道省は、最大時速380キロでの営業を宣言していた北京~上海高速鉄道路線について、4月に発表された国の安全基準に沿って時速250~300キロで運行すると発表した。とはいえ、北京・上海から300~400キロが日帰り圏内に入ることから「沿線の全都市が高速鉄道の恩恵を受けるだろう」と、カンパニャック氏は指摘している。(c)AFP/Allison Jackson

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