【5月30日 AFP】史上最大規模とみられるサイバー攻撃を受け、傷ついた名声を回復させようと苦闘するソニー(Sony)。しかし、同社はもっと大きな問題を抱えていると指摘する専門家もいる。その問題とは「イノベーションの喪失」だ。

 4月に明るみに出たプレイステーション・ネットワーク(PlayStation Network)からの個人情報流出は、ソニーにとって厳しい試練となった。同社は現時点での試算として、被害総額は推定140億円だと発表しているが、ユーザーに対する賠償を考慮に入れると損害額は10億ドル(約810億円)に上る恐れがある。

 それに加え今回の事件は、押され気味のテレビや携帯音楽プレーヤーといった家電製品分野に代わり、オンライン分野の収益を増やそうという同社の戦略の柱を脅かしたからだ。

 マネックス証券(Monex)の金山敏之(Toshiyuki Kanayama)氏は、ソニーにとって重要なことは魅力的な製品を作ることだが、同社のクリエイティブな企業文化は失われてしまったと話す。

 金山氏は、ソニーが自社ソフトウェアを自社ハードウェアで提供したいと主張しているのに対し、米アップル(Apple)ではまず魅力的な製品があって、ソフトウェアはその後に続いて開発される点を指摘。ソニーが再び独創的で魅力ある製品を作るには、企業文化の再生という困難な作業に取り組まなければならないと語った。

 日本経済新聞(Nihon Keizai Shimbun)は、新しい市場を生み出すウォークマン(Walkman)のような革新的な製品をソニーが市場に送り出さなくなってから久しいと述べ、今年見込まれる利益もほとんどはコスト削減によるもので、ソニーに成長をけん引する事業が見当たらないと報じている。(c)AFP/Hiroshi Hiyama