【4月11日 AFP】ネパールの首都カトマンズ(Kathmandu)郊外で店を営むシャンカル・プラサド・バンダリ(Shankar Prasad Bhandari)さんは、ろうそく1本の火の下でお釣りを数え間違えないよう必死に目をこらしていた。

 エネルギー危機で始まった1日14時間の計画停電。ヒマラヤ山ろくに位置するこの国では、このところ1日の大半がろうそく暮らしだ。その影響は至るところに見られる。夜のニュース番組のスタジオは薄暗く、子どもたちは日のあるうちに宿題を済ませようと懸命だ。

 産業界は操業時間の短縮を余儀なくされ、バンダリさんのように小規模な店の経営者たちも買い物客が多い夕方を待たずに店を閉めざるを得ないなど、経済への打撃は甚大だ。

■政情不安で水力発電の可能性生かせず

 ネパールの発電量は毎年わずか643メガワット。その大半を旧式となった水力発電所でまかなっているが、国の需要の半分しか満たせていない。インドから電力を輸入しているが、それでも不足分を補いきれていない。

 実現可能性調査では、ヒマラヤ山系の広大な河川を利用した水力発電で8万3000メガワットを発電できる可能性があるとの結果が出ている。しかし、2006年まで10年間続いたネパール政府とネパール共産党毛沢東主義派(Maoist)の反政府勢力との内戦のせいで、インフラへの投資はほとんど存在しない。

 しかも毛派の勝利によって生じた慢性的な政情不安で問題はいっそう悪化し、この2月に選挙で新首相が選ばれるまで、国のリーダーシップは7か月の空白状態が続いた。エネルギー問題が取り組まれるようになったのは、ようやくその後だ。

■ディーゼル発電機販売など恩恵受ける業種も

 ネパール政府は3月、エネルギー緊急事態を宣言。向こう5年間で2500メガワットを追加発電するための開発に2億7500万ドル(約233億円)を投じると発表した。計画には複数の水力発電所の建設のほか、エネルギーセクターへの投資に大型減税を設ける優遇税制が含まれている。

 ネパールでは特に冬に電力が不足する。冬は一年のうち電力需要が最も高い一方で、川の水量が減るために水力発電能力も最大30%減少する。一定の時間、一定の場所への電力供給を停止する政府の負荷制限策は、少なくともモンスーンの雨が到来する6月までは続きそうだ。

 すべての危機には、得をする者がいる。ネパールのエネルギー危機も例外ではない。ディーゼル発電機販売業のテクノ・トレード(Techno Trade)など棚ぼた利益を得る企業もある。この冬は、銀行のような大規模事業者からインターネット・カフェのような小規模事業者、そして家庭まで含めて、同社の売上は前年比3割増だったと言う。(c)AFP/Deepak Adhikari