【4月6日 AFP】バングラデシュの最高裁は5日、同国中央銀行によって貧困層向けの少額融資機関グラミン銀行(Grameen Bank)総裁の地位から解任されたのは違法だとして、同行創設者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)氏(70)が起こしていた訴えを退けた。ユヌス氏側の弁護士によると、7人の最高裁判事が全会一致で決定したという。

 バングラデシュ中央銀行は2日、ユヌス氏が1999年にグラミン銀行の総裁に再任された際、政府の事前承認を得ていなかったとして、ユヌス氏を総裁から解任。ユヌス氏はこれを違法であるとして訴えを起こし、国際的な支持も多く集まった。だが、同国の高等裁判所は8日、中央銀行による解任命令は合法であり、ユヌス氏はグラミン銀行の退職年齢である60歳も超えていたと述べ、ユヌス氏の訴えを退けていた。そのため、ユヌス氏は最高裁に上訴していた。

 ユヌス氏の訴えが退けられたことにより、残された手段は、グラミン銀行の取締役9人がユヌス氏の復職を求めて最高裁に起こした訴訟だけとなる。審理は6日に開かれる可能性もあるが、復職が認められる見通しを立てている人は少ない。

■「政府にねたまれた」との指摘も

 総裁を解任されただけでなく、バングラデシュ国内のメディアからも批判されたユヌス氏は、名目上はグラミン銀行関連とされる問題で裁判所に3度召喚された。グラミン銀行はいまや政府調査の標的となっている。グラミン銀行の国内での非常に強い影響力と、太陽光発電や携帯電話事業、その他の消費財事業への進出が、政府のねたみを招いたと指摘する専門家もいる。

 前年12月、ノルウェー人ジャーナリストがユヌス氏に批判的なテレビドキュメンタリー番組を発表したことを受けて、バングラデシュのシェイク・ハシナ・ワゼド(Sheikh Hasina Wajed)首相は「貧しい人々の血を吸い上げている」とユヌス氏を非難。節税のために会計上の「トリック」を使っているとも批判していた。

 ユヌス氏の解任を受けて、バングラデシュでは抗議デモが発生し、国際社会からの批判も巻き起こっている。米政府は今月に入り、友好的な解決が図られなければ、バングラデシュとの関係に影響がでるだろうと警告した。

 グラミン銀行は25%が政府出資で、従業員数は2万4000人。地方在住の女性たちを中心に800万人に融資を行っている。グラミン銀行が生み出した貧困層に対する無担保小口融資「マイクロクレジット」は、世界の貧困国に広がっている。(c)AFP/Shafiq Alam

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