【3月30日 AFP】東京電力福島第1原子力発電所の事故による食品の放射能汚染に対する恐怖から、米国の放射線検出器(ガイガーカウンター)販売業者に世界から注文が殺到している。

 福島原発から放出された放射性物質が世界中に拡散するのではないかとの懸念が高まる中、特に環太平洋諸国の人々がわれ先にと買っているという。

■各社で軒並み売り切れ

 インターネットでガイガーカウンターを販売する業者は「売り上げは天井知らず」だと口をそろえる。ティム・フラナガン(Tim Flanagan)氏が運営する「ガイガーカウンター・ドットコム(GeigerCounter.com)」のホームページには「SOLD OUT(売切れ)」の文字が躍る。1週間以上前から受注は見合わせているという。

 2種類のガイガーカウンターを製造している水質検査機器メーカー、インダストリアル・テスト・システムズ(Industrial Test Systems)」のマイク・マックブライド(Mike McBride)氏も「今回の危機で注文が殺到している。世界中から問い合わせがある」と言う。上記の2社が過去3週間に販売したガイガーカウンターの大半は、食品汚染への懸念が最も高まっている日本と米西海岸に出荷された。

 1台450ドル(約3万7000円)するドイツ製の携帯ガイガーカウンターを販売するGSガイガー(GS Geiger)も現在、出荷まで4か月待ちだ。米テネシー(Tennessee)州のメーカー、SEインターナショナル(SE International)も残業して受注分を消化していると言い、新規注文は受け付けていない。

 米、カナダの太平洋岸では、日本から放射能を帯びた雲が来るのではないかという懸念も爆発的な売れ行きを後押ししている。マックブライド氏は日本から部品を輸入しているメーカーから日本政府の発表に不信感を持つ人まで幅広い層が購入していると言う。前週、店頭に足を運んだ女性は、アジアからの輸入食品を扱っている市場で買う食品をチェックするために1台購入して帰った。

■価格は250~800ドル程度

 フラナガン氏によると「ガイガーカウンター・ドットコム」の通常の売上高は年間1000台で、購入するのは鉱石収集家や宝石鑑定士、科学者らだと言う。しかし、11日に発生した東北地方太平洋沖地震と津波によって福島原発が深刻な状態に陥り、複数の原子炉がメルトダウンするかもしれないという見方が広がった地震後の5日間で、500台あったフラナガン氏の在庫は全て売れた。

 販売業者たちいわく、スマートフォンサイズの携帯型の機種は250~800ドル(約2万1000円~6万6000円)で、使い方も簡単で信頼性も高いという。

 しかし、自然界に無害な放射線があることをユーザーは知る必要があるとフラナガン氏は強調する。購入してスイッチを入れれば機器はすぐに反応するが、それは自然の放射線を検出しているからだ。「多くの人は知らないが、わたしたち人間は常に放射線を浴びている。それは主に宇宙から届く放射線だ」

■ユーザーに放射線測定促す動きも

 同じく在庫薄となっているメーカー、インターナショナル・メコム(International Mecom)では購入者に、自分の周りの放射線レベルを計測して公開するよう呼び掛けている。「自分が集めたデータをグローバル・コミュニティのできる限り多くの人が利用できるよう、すべてのカスタマーに市民モニタリング・ネットワークへの参加を呼び掛けます」。

 同社が設置している米カリフォルニア(California)州セバストポル(Sebastopol)、オレゴン(Oregon)州アシュランド(Ashland)、ハワイ(Hawai)州マウイ(Maui)の3か所の観測基地での放射能レベルは、現時点では平常値だと言う。(c)AFP/Paul Handley