【1月15日 AFP】少林拳で有名な中国・河南(Henan)省の仏教寺院・嵩山少林寺(Shaolin Temple)は、その拳法を広める目的で世界進出に力を入れており、これまでに各国で40を超える「企業」を創設している。

 10日の国営紙・環球時報(Global Times)によると、北京(Beijing)で行われた文化フォーラムで、少林寺住職の釈永信(Shi Yongxin)法師は、「ベルリン(Berlin)やロンドン(London)など世界中の都市で、40を超える会社を運営している。また同業他社の運営にも参画している」と述べ、少林寺系の企業が外国の土地や不動産を買い付けていることも明かした。

■「少林寺のCEO」が活躍

 中国の僧として初めて経営学修士号を取得した釈法師は「少林寺のCEO」と呼ばれる人物だ。しかし、こうした事業は利益追求が目的ではなく、世界の「少林寺熱」を満たすための活動だという点にこだわった。 

 495年創建という古い歴史を持つ嵩山少林寺は、禅宗そしてカンフーの生まれた場所として知られる。拳法の修行を積んでいる少林寺の武僧たちは、数世紀にわたってアジアにおける伝説的な存在だったが、過去半世紀の間に映画やテレビなどでその評判が世界に伝わった。

 釈法師によれば、少林寺が世界各地に開いた道場では拳法以外にも、禅の瞑想のワークショップや、中国語講座なども行なわれている。米国だけですでに130近い道場があり、武僧が英語、ドイツ語、スペイン語で指導できる体制が整っているという。

 釈法師は約10年前に少林寺の住職となって以来、カンフーショーや映画制作、インターネット上でのグッズ販売といった商業ベンチャーを展開してきた。

■「仏教の商業化」批判も

 一方で昨年、インスタント・ヌードルなどの商品に少林寺の商標を表示したいという申請を、北京の裁判所に却下されるといったことも起きている。釈法師の事業拡張は、仏教を商業化するあからさまな試みだと各方面で批判されている。

 環球時報は社説で、少林寺のビジネスについて次のように評した。「多くの人びとにとって、寺院とは物質的世界の喧騒の外にある隔絶した場所だ・・・釈法師のような僧侶が飛行機で世界各地をまわって自分の商売を宣伝することに、社会の理解はついて行けない。教えを広めることはほとんどの宗教における昔からの主題だが、少林寺が国外展開する新事業の数々は、中国の伝統文化や思想を広め、市民同士の交流を通じて中国への理解を深めることに役立っている」

(c)AFP