【12月7日 AFP】旧東ドイツのハイニヒェン(Hainichen)にある朽ちかけた工場で、ウルフラム・パリッツ(Wolfram Palitzsch)博士(44)は煙を吐くタンクに囲まれ、携帯電話やテレビに欠かせないレアアース(希土類)の「リサイクル」に輝ける未来を見ている。

 パリッツ氏はレアアースを抽出する方法を追い求めている。国際市場をほぼ独占する中国による輸出規制などを受け、レアアースの価格は過去1年で3倍に急騰した。

「ほとんど誰もこの方法を思いつかなかったなんてびっくりだ」。泡をたてる試験管の周囲を急ぎ足で歩き周りながら、パリッツ氏はAFPに語った。

 現在パリッツ氏が取り組んでいるのは、太陽光パネルからのインジウムのリサイクルだ。インジウムはレアアースではないが、薄型テレビの製造に欠かせない資源で、価格が高騰している。

 特殊な化学薬品で満たされたタンクに太陽光パネルを落とし込み、残留物を集めてインジウムを抽出する。パリッツ氏の特許技術だ。

■ドイツよりも日本が注目

 パリッツ氏がいま注目するのはレアアースの1種、ユウロピウムの抽出だ。白い粉末状の蛍光体で、テレビ画面の赤色の製造に使われる。省エネの蛍光ランプにも含まれている。

 長年、独自の技術をドイツの企業に売り込んできたが、注目されることはなかった。最近になって日本からの関心が高まっているという。

「わたしの発見を話してくれないかと、東京に招待されたよ。母国ドイツよりも日本の方がはるかに関心が高いね」とパリッツ氏は語る。

 日本は、9月の中国によるレアアースの一時禁輸措置を受け、中国以外の供給先を探し始めている。また、専門家らは、2016年までに世界のレアアース供給量を合わせても中国国内の需要さえ満たせなくなると分析している。

■発端はアルミニウム抽出

 パリッツ氏の勤めていた水処理製品の会社は、2007~08年のアルミニウム価格の高騰を受けて経営が厳しくなっていた。

 父親がヨーグルトのびんなどの金属製のふたを集めてリサイクルしていたことを思い出し、パリッツ氏は太陽光発電業界に入った大学の友人たちとともに、太陽光パネルをリサイクルすることを思いついた。

 この発想に、ドイツ経済技術省も8万5000ユーロ(約940万円)の助成金を拠出した。近いうちに、大がかりに太陽光パネルのリサイクルを始めたい、とパリッツ氏は考えている。

■「中長期的な話だ」と専門家

 一方、専門家たちは懐疑的だ。ドイツの希少資源研究機関の地質学者は、レアアースのリサイクルは「非常に複雑だ。近い将来に大規模リサイクルができるようになるとは考えられない。もしできたとしても、中長期的な話だ」と語った。(c)AFP/Aurelia End