【9月24日 AFP】映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ(Universal Studios)の建設計画をシンガポールが発表した際、採算が取れるのかと疑う声があった。しかしオープンからわずか半年で来場者は100万人を超えた。

 屋外型巨大テーマパークの新たな進出先として、今最も注目を集めているのはアジアだ。中国、インド、インドネシアなど経済新興国の台頭で豊かになってきたところに、航空運賃の安さが追い風となっている。

 エンターテインメント娯楽産業専門の調査会社AECOMエコノミクス(AECOM Economics)のクリスティアン・アーン(Christian Aaen)アジア地域担当ディレクターは、「業界はアジアに移動しつつある。所得の増大と中流層の拡大、娯楽や余暇需要の高まり・・・こうした基本条件が備わっているところでは、旅行産業と経済発展にとって、テーマパークは完ぺきな商品だ」と分析する。

 テーマパーク業界の国際NPO、テーマエンターテインメント協会(Themed Entertainment Association)によると、東京ディズニーランド(Tokyo Disneyland)、東京ディズニーシー(Tokyo Disney Sea)、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(Universal Studios JapanUSJ)、韓国ソウル(Seoul)郊外のエバーランド(Everland)は、09年の来園者数で世界のテーマパークの10位以内に入っている。

 アジア市場の有望性に後押しされ、ユニバーサル・スタジオは米国版を抜く世界最大のテーマパークを韓国に建設する計画だ。ディズニーランドも上海(Shanghai)で新パーク建設にこの秋から着工する。

■次世代の「世界の消費者層」

 アジア開発銀行(ADB)の最近の調査によると、アジアの中流層は飛躍的な割合で増えており、世界最大の消費者グループになりつつある。

 アジアの発展途上国でADBが中流層に大別した人口は、1990年には5億6500万人だったが、2008年にはその3倍を超える19億人にも達した。

 中流層の増加が最も著しいのは中国だ。1日当たりの所得が6~10ドル(500~850円)の国民は95年には総人口の4.8%だったが、07年には25.5%にまで増えた。インドでも、この所得層は93-94年には29%だったのが、04-05年には38%に増えている。

 アジア域内の中流層の旅行者増により多大な恩恵を受けているのは、人口わずか500万人の小さな富裕国シンガポールだ。この7月には前述のユニバーサル・スタジオ効果もあり、月間過去最多の110万人がシンガポールへ渡航した。同国への旅行者を国籍別で見ると、上位5位にはインドネシア、中国、マレーシア、インド、オーストラリアが入っている。

 ADBは「経済発展するアジアの人口が中流層として確立するにつれ消費者層も拡大しており、次世代の世界の消費者層として、これまで米国や欧州の中流が担ってきたような役割が多大に期待できる」と報告している。(c)AFP/Philip Lim