【8月25日 AFP】ルワンダの首都キガリ(Kigali)は、以前は居酒屋でさえ夜9時には閉まる「田舎町」だったが、高層ビルが立ち並ぶオフィス街や24時間営業のショッピングセンターを備えた「アフリカのシンガポール」へ生まれ変わろうとしている。

 10年前は、喫茶店でコーヒーを頼めば、品質が悪い輸入物のインスタントコーヒーが缶ごと、粉末ミルクを添えられて出てきたものだが、今や国産の豆をひいて入れた本格的なエスプレッソ、マキアーノ、モカなどの中から選ぶことができる。ミルクももちろん、ミルクスチーマーで温めたものだ。

■50年間の都市計画

 同国では現在、ルワンダ開発局(Rwanda Development Board)の音頭のもと、国を中所得国に押し上げるための「Vision 2020」プロジェクトが大々的に行われている。

 ビルンガ国立公園(Virunga National Park)に生息する絶滅危惧(きぐ)種、マウンテンゴリラをめぐるエコツーリズムの普及活動については、既に効果が表れ始めている。また、ルワンダ産コーヒー豆も認知度が上がり、ブランドとして確立されつつある。

 キガリのアイサ・キラボ(Aisa Kirabo Kacyira)市長は、「キガリはアフリカで最も成長著しい都市の1つ。成長を確かなものにするには周到に練られた計画が不可欠だ」と話す。

 キガリの今後50年間の都市基本計画を練ったのは、米コロラド(Colorado)州に本社を置くOZ Architecture社だ。計画では、新たな国際空港のほか、ショピング街、オフィス街、テクノロジー会社や医療機器会社の企業団地を建設する。 

■国を一から作り直す

「彼らはルワンダを、アフリカで最も持続可能で、ハイテクで、ネットワークの整備された国にしようとしています。東南アジアのシンガポールのようにね。国全体を一から作り直そうとしています」と、同社の建築責任者は地元紙に語る。

 コンベンションセンターの建設現場では、巨大な黄色いクレーンが何台もせわしなく動いている。センターは2000人以上を収容できる会議施設のほか、300室の高級ホテルも併設される。会議を誘致して参加者を観光に誘導する「カンファレンス観光」は、ルワンダ開発局の推進事項の1つだ。

 ルワンダは国土が狭いため、建物が無秩序に拡散するのを防ごうと、10階建て以上のビルの建設が奨励されている。

 地元で建設関連会社を営むパトリック・セバチギタ(Patrick Sebatigita)さんもほくほく顔だ。彼は2年前に自宅の1室で、パソコン1台と小型トラック1台で事業を始めた。それが、ルワンダ経済の急成長とともに、事業がとんとん拍子に拡大していった。 

「このまま行けば、ルワンダ全体とは言いませんが、一部の地域はシンガポールに追いつきますよ」とセバチギタさん。

 2004年以降、ルワンダの国内総生産(GDP)成長率は平均7.1%。世界銀行(World Bank)の調査「Doing Business Survey」で、ルワンダは「事業規制の改革が世界で最も速い国」に選ばれた。背景には、2009年の行政改革と商法などの改正により、起業、雇用、不動産登記、借り入れが容易になったという事実がある。

■環境にも配慮

 キガリは、ビニールのレジ袋を禁止した都市としても有名だ。だからこそ、開発においては環境も配慮している。現在のギコンド(Gikondo)産業地区は、いずれ湿地帯に戻される予定だ。

 キラボ市長は、住民がアフターファイブにスポーツなどのレクリエーションを楽しめるような、「魂と生の喜びにあふれた都市にしたい」とも語った。

 16年前の1994年、3か月で推定80万人が殺害された大虐殺がルワンダで起きたことはまだ人々の記憶に新しい。当時のキガリは大虐殺のトラウマ(心的外傷)のただ中にあった。その痕跡は、虐殺記念館や銃弾を浴びて穴だらけになった国会議事堂の壁に見ることができる。この壁は、あえてそのままの姿で残されている。(c)AFP/Helen Vesperini