【8月22日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロで崩壊した世界貿易センター(World Trade Center)ビル跡地「グラウンド・ゼロ(Ground Zero)」から2ブロック(区間)の場所にイスラム教のモスクを建設する計画をめぐって議論が起きているなか、マンハッタン(Manhattan)南端部に広がるビル群の中に104階建ての「1ワールドトレードセンター(1 World Trade Center)」が徐々にその姿を現し始めている。

 グラウンド・ゼロは前年まで、金融街の中心にぽっかりと空いたコンクリートと鉄の殺風景な窪地だった。観光客や同時多発テロの犠牲者の遺族や友人たちが訪れる一方、再建計画の兆しはまったくみられなかった。

 デベロッパーと土地オーナーの折り合いがつかないことも再建計画に遅れをもたらした。また、同時多発テロの厳粛な追悼式典が毎年行われることもあって、グラウンド・ゼロの「聖地」としての性格が強まり、悲劇の記憶から次の一歩を歩み出すことを困難にさせてきた面もある。

 そこにモスクと宗教間交流センターをグラウンド・ゼロの数ブロック先に建設する計画が持ち上がり、同時多発テロ犠牲者の遺族を不快にさせるものだとの反対意見が出て議論が沸騰したことで、再びグラウンド・ゼロに注目が集まっている。

■独立宣言にちなんで高さは「1776」フィート
 
 同時多発テロの犠牲になった3000人近い人びとを追悼し、ニューヨーク(New York)があの悲劇を克服することを目指す「1ワールドトレードセンター」の建設は、モスク建設をめぐる激論をよそに着々と進んでいる。

 デービッド・チャイルズ(David Childs)氏らの建築計画による1ワールドトレードセンターは、米国独立宣言の1776年にちなんで、完成時には高さが1776フィート(541メートル)の米国で最も高いビルになる見込みだ。すでに32階までの鋼桁が設置されており、年内に50階まで伸びるはずだ。

 ビルのオフィス部分26万9000平方メートルと、店舗・レストラン・展望デッキなどの部分の4万6000平方メートルのリースを担当する不動産会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield)によると完成予定は2013年。

 クッシュマンのタラ・スタコム(Tara Stacom)副会長は18日、AFPの取材に対しモスク建設騒動は「まったく影響がない」と述べ、「(1ワールドトレードセンターの)需要はとても高い」と語った。最初に1WTCビルの賃貸契約を結ぶのは、1万7000平方メートルのオフィスを借りるある中国企業だという。(c)AFP/Luis Torres de la Llosa