【7月30日 AFP】米経済が「日本型」のデフレに陥る危機に直面している――。米連邦準備制度理事会(Federal Reserve BoardFRB)の政策決定機関である連邦公開市場委員会(FOMCFederal Open Market Committee)のメンバーを務めるジェームズ・ブラード(James Bullard)米セントルイス地区連銀総裁が29日、このような警告を発した。

■「ゼロ金利は両刃の剣」

 ブラード氏はFRBのジャーナルに発表した論文の中で、米経済が日本の「失われた10年」に「近年の歴史の中で最も」近づいていると指摘し、「こうした結果から逃れるのは難しい。希望は戦略とはならない」などと論じた。

 また、企業活動が圧迫されたり経済成長の低迷に拍車がかかるなど何らかのネガティブな外的ショックがあれば、物価の下落が加速するとして、FRBは危機対応策の再開を検討すべきだと忠告した。

 2007年後半に始まった金融危機以降、FRBと米財務省は大量の赤字国債を買い取る「量的緩和」を実施して景気のてこ入れを図ってきた。しかし、歴史的な低金利が続く中で有効な景気刺激策はほとんどないのが実情だ。

 ブラード氏は、FRBが金利を通常水準に引き上げることは難しいと見て低金利を維持すれば、デフレ・スパイラルから抜け出せなくなる可能性があると警告。「長期にわたるゼロ金利」を約束することは「両刃(もろは)の剣」だと述べ、「ネガティブショックに対するより有効な政策は、米国債の購入を通じた量的緩和策の拡大」だと主張している。

■論議活発化がねらい?

 ブラード氏は金融政策のタカ派として知られ、その発言は米中央銀行たるFRB内での抜本的な政策転換のしるしとみなされてきた。しかしFRB幹部の1人はAFPの取材に対し、今回のブラード氏の主張は論議の活発化を狙ったものだと述べ、FRBの政策転換を否定した。アナリストもこれに同調している。

 英バークレイズ・キャピタル(Barclays Capital)のアナリスト、マイケル・ゲイペン(Michael Gapen)氏は、「ブラード氏のコメントは緊急対応時という文脈の中で理解すべき。政策転換が切迫しているしるしととらえることはない。それよりも、むしろこうした分析で、FRBが次に動く方向性に保証をもたせようとする狙いだ」と語った。(c)AFP/Andrew Beatty