【7月7日 AFP】中東以外では世界最大の埋蔵量を誇る北米の原油を求めて、カナダのオイルサンドを開発する合弁事業に中国が乗り出している。

 中国は以前、もっと強引な方法で、北米の原油を狙ったことがある。2005年、米石油大手ユノカル(Unocal)を中国海洋石油(CNOOC)が買収しようとしたときだ。しかし、香港のCLSA証券の石油ガス調査部門・北米責任者デービッド・ヒューイット(David Hewitt)氏によると、今回は「企業ごと買い取ったり、経営権や支配権を握るといった強引なやり方ではない」という。

■存在感を増す中国資本

 ユノカルの一件が不成功に終わって以降、中国企業はカナダ・アルバータ州にあるオイルサンドの開発に何十億ドルという多額の資金を投じてきた。ここに眠っていると推計される原油埋蔵量は1750億バレルで、2600億バレル以上といわれるサウジアラビアに次ぐ。

 この広大なオイルサンド資源の開発をめぐって中国の政府系ファンドは5月、カナダ石油天然ガス大手ペンウェスト(Penn West)に3000億ドル(約26兆円)を投資する計画で合意した。一方、中国石油化学2位の中国石油化工(Sinopec)は4月、カナダ最大のオイルサンド生産会社シンクルード・カナダ(Syncrude Canada)の株式のうち、米石油大手コノコフィリップス(ConocoPhillips)が保有する9%を46億5000万米ドル(約4337億円)で購入する契約を結んだ。

 前年8月には中国最大の石油企業ペトロチャイナ(中国石油天然ガス集団、PetroChina)が、石油公社アタバスカ・オイルサンド(Athabasca Oil Sands)が進める2事業の資金の60%を出資することで合意している。

■経済危機で地元の反応一変

 ビチューメンと呼ばれる高粘性のタール状の原油を砂岩層や粘土層から採掘する膨大なコストが、世界中で資源を探し回っている中国をしり込みさせることはない。米エネルギー省によると、米国に次いで石油消費量2位の中国は、1日当たり800万バレルの石油を使用し、400万バレルを輸入している。

 ユノカルの買収騒ぎの際は中国国営企業が北米の主要資源を買い占めることへの危機感が噴出したが、世界的な経済危機を経て状況は一変した。今や、カナダの政治家たちは投資の呼び込みのほうに躍起だ。ペトロチャイナとの合意が成立した際、スティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相はさらなる投資を期待する発言をしている。

■環境破壊の懸念も

 また、オイルサンドをめぐっては採掘による環境破壊や、液体の在来型石油資源より二酸化炭素排出量が3~5倍多いといった問題があり、北米では石油大手に対し環境活動家のみならず株主からも圧力が高まる傾向にあることも、中国投資が増大する背景にある。

 こうした中、中国はパイプラインにも投資の手を伸ばしている。調査会社IHSグローバル・インサイト(IHS Global Insight)のアジア太平洋エネルギー担当アナリスト、トム・グリーダー(Tom Grieder)氏は「現時点では中国の石油企業は政治的反対をかわそうと、控えめな出資にとどまっている。まずはオイルサンド開発の経験と積もうというわけだ」と分析する。
 
 中国の石油輸入量は2020年には1日当たり900万バレルを超えると予測されている。中国の指導者たちの最大の関心事はエネルギー安全保障だ。「中国にとっては供給の確保が、絶対不可欠なのだ」(c)AFP/Allison Jackson