【4月25日 AFP】アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ(Abu Dhabi)で前週開催された不動産開発・投資見本市「シティースケープ・アブダビ(Cityscape Abu Dhabi)」は、世界的な金融危機による影響を受け、同国の開発計画が、「既存計画の完遂」に移行したことを示すものとなった。

 アブダビに続く道路には、「すべてのプロジェクトは建設中です」と書かれた不動産開発大手による看板が掲げられ、計画が順調な印象を与えようとしている。

 シティースケープ・アブダビでは、35か国からの250社の出展があった。

 しかし、ビジネス環境は金融危機以前とは劇的に変わった。金融危機以前には、同じUAEのドバイ(Dubai)で大規模計画が次々と発表されては瞬く間に完売となる状況で、アブダビもその流れに続いた。

 ことしの見本市では、新たなプロジェクトは1つも発表されないもようだ。見本市では、2008年の秋に頂点を迎えたドバイを中心とした不動産ブームの際に発表された、数々のプロジェクトのミニチュア模型が飾られている。

 とりわけ目立つのは、政府が計画を実行した際の2030年のアブダビの街並みを表した巨大なミニチュア模型だ。

 事業用不動産サービス、シービー・リチャード・エリス(CB Richard Ellis)のマーク・モリス・ジョーンズ(Mark Morris Jones)氏は、「過去4~5年間に発表された予定の多くが、現在は、よりゆっくりとした目標設定に変わった」と述べる。

 また、株式時価総額でアブダビ最大の不動産開発会社「ALDAR Properties」のマーケティングマネージャー、Ousama Ghannoum氏は、「需要の変化が起きた」と述べる。現在、不動産開発は「手ごろな住宅」に注力しており、高級住宅市場にはあまり力を入れていないのだという。

■オイルマネーに経済基盤を持つアブダビ

 オイルマネーがあることと、新たな不動産開発を行わなかったため、アブダビは金融危機の際にもドバイほどの打撃を受けなかった。ドバイでは、投資家たちが見切りをつけて去る中、新築住宅がどんどんと建設され、不動産価格が半値にまで下落した。

 調査会社Proleadsによる、アブダビの1000万ドル(約9億4000万円)以上の開発計画を対象とした調査によると、中止されたプロジェクトは総額4億9100万ドル(約461億円)の9件のプロジェクトのみで、一時中断された開発計画は総額68億ドル(約6400億円)の42件。一方で、総額1539億ドル(14兆5000億円)に上る307件が現在、実行段階までこぎつけている。さらに総額739億7000万ドル(約7兆円)のプロジェクト104件が計画中の段階にあるという。

 アブダビ首長国にはUAE国内の油田のほぼすべてがあり、大規模な開発計画では政府が大きな役割を果たしている。首都アブダビ市も、インフラ整備に惜しみなく資金を注いでおり、金融危機の影響を緩和する役割を果たしている。また、原油価格が回復したことによりアブダビの経済基盤は安定しており、政府系の開発会社はドバイの企業よりも余裕のある環境にあるといえる。(c)AFP/Ali Khalil