【3月5日 AFP】インド西部アーメダバード(Ahmedabad)で最近、ウシの排泄物を原料に医薬品などを作る研究所が増えている。

 インドの人口の大部分を占めるヒンズー教徒にとってウシは神聖な動物で、牛肉を食べることは固く禁じられている。しかし乳製品と同じく、その排泄物の利用は禁じられていない。古代ヒンズー教の聖典にも、ウシの排泄物で作った医薬品の記載がみられるという。

 研究所の1つを案内してくれたケサリ・グマット(Kesari Gumat)氏は、研究者たちが牛糞とハーブを混ぜ合わせ、ウシの尿が沸騰するビーカーを見つめる研究室を歩きながら「牛糞には神が宿っているのです」と語った。

「原料」は研究所内での調達だ。敷地を徘徊する300頭を超えるウシから排泄物を集める。研究所を訪れた人は裸足になり、日光で半乾きにされたやわらかい牛糞の上を歩かなければならない。グマット氏は、新鮮な牛糞の上を裸足で歩くと、殺菌効果で傷が治り、健康にもとてもよいと説明する。また乾燥させた牛糞で肌をこすると、古い皮膚が取り除かれ、血行がよくなるとも言う。

■医薬品から衛生用品まで

 牛糞は一般的に1週間以上乾燥させ、高温で滅菌して砕いた最終製品の粉末を、さまざまな素材と混合して医薬品や衛生用品にする。尿は蒸留して不純物を取り除く。応用製品は医薬品から石けん、シャンプー、歯磨き粉などの衛生用品、線香や蚊取り線香にいたるまで幅広い。

 インド最大のヒンズー至上主義グループ、「民族奉仕団(Rashtriya Swayamsevak SanghRSS)」も、ウシ排泄物の応用研究を歓迎している。RSSも前年、コーラ飲料に代わる「健康飲料」として、ウシの尿をベースにしたソフトドリンクを開発した。現在は「ウシの水」と名づけたこの飲料の販売認可を待つかたわら、パッケージ制作やマーケティング戦略の立案、そしてインドの暑い夏でも腐らせない保存方法の開発などに余念がない。

 アーメダバードの別の研究機関に所属するラガブ・ガンジー(Raghav Gandhi)氏は、生産工程は排泄物を集めるずっと以前から始まっていると話す。ミルクに浸した草をウシに食べさせ、精白していないカンショ糖を混ぜたハーブを食べさせ、精塩を入れた水を飲ませる。「単純なことです。ウシは食べたものを出すのですから」

 一般的な医師の間では、牛糞を原料とした医薬品の効果は独立した研究機関によって検証されたことがないという指摘がある一方で、代替療法などの中には、無害な上、一定の効果があるとして患者に使わせている医師もいる。

 アーメダバードの主婦ニラ・パルマル(Nila Parmar)さん(42)は数年前から毎朝一杯のウシの尿を飲んで1日を始めている。肝臓を悪くした彼女は2年もさまざまな療法を試したが、効果があったのはガウ・ムトラ(ウシの尿)だったという。(c)AFP/Rupam Jain Nair