【12月1日 AFP】北朝鮮が11月30日、17年ぶりに通貨ウォンのデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を実施し、市民らは混乱に陥っていると、聯合(Yonhap)ニュースなど韓国メディアが1日、報じた。

 聯合ニュースが中国北東部・瀋陽(Shenyang)発の情報として伝えたところによると、旧通貨と新通貨の交換比率は100対1。旧1000ウォン紙幣が、新通貨では10ウォン紙幣となる。

 北朝鮮の情報筋によると、多くの平壌(Pyongyang)市民は、突然のデノミに戸惑っているという。また、隠し資産の発覚を恐れた人びとが、ウォンを中国元か米ドルに両替しようと闇市場に殺到。これらの通貨が高騰している模様だ。

 韓国の北朝鮮専門インターネット新聞「デーリーNK(Daily NK)」は、瀋陽で入手した北朝鮮北東部・咸鏡北道(North Hamkyong-do)筋情報として、デノミ実施のニュースが伝わると市場は混乱に陥ったと伝えた。

 また、中国と国境を接する北西部・新義州(Sinuiju)からの情報によると、貿易業者が両替商を取り囲み、両替商らは逃れようとするなど市場はパニック状態だという。

■デノミ断行の背景

 北朝鮮が突然、デノミを断行した背景には、2002年の部分的経済改革で北朝鮮通貨が下落したことに加えて、海外送金や外国で海外で働くなどして市民らが蓄え、闇市場で流通している隠し資産を表面化させる狙いがあるとみられる。

 一方、韓国紙、朝鮮日報(Chosun Ilbo)は、デフレ断行は深刻なインフレの抑制と金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の三男のジョンウン(Kim Jong-Un)氏への実権移譲を前に、体制の引き締め強化を意図したものと報じている。

 同紙は、消息筋の話として、2002年7月の経済改革導入以来、物価があまりにも高騰しすぎ北朝鮮ウォンの貨幣価値が下がったことが、デノミ断行の理由ではないかと伝えた。

 北朝鮮経済に関する情報サイト「North Korea Economy Watch」によると、北朝鮮通貨の対ドル公式交換レートは、2002年の経済改革前には、1ドル=約2.20ウォンだったが、改革後は153.50ウォンと70分の1にまで下落している。一方、2009年初頭の闇市場での対1ドル交換レートは3000ウォンだったという。

 こうした報道に対し、韓国統一省は、北朝鮮でデノミが実施されたとの情報は確認できていないとしている。 

 北朝鮮は故・金日成(Kim Il-Sung)初代国家主席の生誕100周年となる2012年を目指し、国民を総動員して「強盛大国」運動を強行している。(c)AFP