【7月18日 AFP】インドの自動車大手タタ・モーターズ(Tata Motors)は17日、同社の超低価格車「タタナノ(Tata Nano)」の納車を開始した。「世界一安い車」が初めてインドの道路に登場した。

 同社のラタン・タタ(Ratan Tata)社長は同日、ムンバイ(Mumbai)市内の自動車販売代理店で直接3人に車を引き渡した。

 税関職員のアショック・ラグナト・ビシャレ(Ashok Raghunath Vichare)さん(59)はその1人だ。ビシャレさんはシルバーのNano LXモデルを購入。報道カメラマンにもみくちゃにされながら「(この車を入手できて)とてもうれしい」とコメントした。ビシャレさんと一緒に自動車販売代理店を訪れた家族は、最初のドライブで付近のヒンズー教の寺院に行き、車に祝福を授けてもらう予定だと語った。
 
 ナノは初回10万台の限定販売で、購入者は抽選で決定された。購入者の1人となったムンバイの路上で靴修理業を営む男性は、当初2輪車を買うつもりで7年間お金を貯めていたが、タタナノがわずか10万ルピー(約19万円)で買えることを知り、4輪車を買うことにしてタタナノの発売を待っていたという。

 同車はメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)の「スマート(Smart)」やドイツの国民車「フォルクスワーゲン・ビートル(Volkswagen Beetle)」と比較されることが多い。

 タタ・モーターズは4月に「スタンダード」「デラックス(CX)」「ラグジュアリー(LX)」の3モデルを発売した。CXとLXの上級2モデルにはエアコンやパワーウインドウなどが装備されている。

 価格はスタンダードモデルが税込みで14万ルピー(約27万円)、デラックスモデルは最高で18万5000ルピー(約36万円)。インド北部にあるタタ・モーターズの工場では年間最大5万台のタタナノの生産が可能だ。同社は この車がインド国民の移動形態を変えるかもしれないと期待している。

 タタ・モーターズは、紅茶から鋼鉄までを手がけるタタ財閥傘下のインド最大の自動車メーカーだが、世界金融危機の影響でトラックや自動車の需要が落ち込みを見せたことから、他の自動車メーカーと同様、経営に打撃を受けている。前月には2009年3月期の連結決算が過去8年間で初めて赤字になったと発表した。原因の一部は、同社がフォード(Ford)から08年に買収した英高級車ブランド「ジャガー(Jaguar)」と「ランドローバー(Land Rover)」の売り上げが落ち込んだためだという。(c)AFP/Phil Hazlewood