【5月26日 AFP】中国の大富豪の1人、Chen Yilongさん(49)はつい最近、プライベートジェット機を購入した。世界的な景気後退は、彼には無縁のようだ。

 中国北部・陝西(Shaanxi)省西安(Xian)の喫茶店で、タバコに火をつけるChenさん。AFP記者が資産総額を尋ねると、「百万長者ということにしておいてくださいよ」と耳元でささやいた。Chenさんは不動産会社のオーナーだ。

 上海の経済誌「胡潤百富(Hurun Report)」が4月に発表した富豪ランキングによると、1000万元(約1億4000万円)以上の資産家は82万5000人。中国人口の0.06%にあたる。金融危機で出稼ぎ労働者2500万人が失業したが、こうした資産家の大半は「景気後退による生活への影響は一切ない」と答えているという。もちろんChenさんもその1人だ。

 Chenさんはお茶を飲みながら、先ごろ米国から購入したプライベートジェット「Cirrus SR22」のことを得意げに話してくれた。非常時のパラシュート付きで、お値段は500万元(約7000万円)。国内の大富豪たちでもなかなか手が出ない、超高価な買い物だ。プライベートジェットは子どものころからの夢だったという。 

■中国の経済発展と並行するサクセスストーリー

 彼は、過去10年間の急速な経済発展とともに、貧しい一市民から富豪へと変ぼうした。

 弁護士としての訓練を受けたことはあるが、これまでの職業人生の大半を軍隊で過ごした。そのころ、政府は兵士らに給料を補うための「サイドビジネス」を認めており、Chenさんも1980年代後半に「酸素を製造・販売する部隊の監督」というビジネスを経験した。ちなみに、のちに兵士らが訓練に励まなくなったことから、サイドビジネスは禁止されたという。

 1990年代後半に軍を除隊し、社会復帰のための費用として5万元(約70万円)を受け取った。このお金で中古のトラックを買い、運送業を始めた。だが、雇った運転手が1年の間に交通事故を2回起こしたり、人をはねたりで、「運送業は危険だしもうからないということを実感しました」

 やがて、不動産というものを知り、自己の資金と借りたお金で、「Weinan Changlong Real Estate Development Company」という不動産会社を設立した。従業員数は20人程度、年間売上高は数百万元にものぼるという。

 今や、「たくさんの別荘」を所有している。中国では珍しいトレーラーハウスも購入した。同社を共同経営する妻が、このハウスを見たときの感想は、「次は何を買うつもり?飛行機?」だったという。(c)AFP/Marianne Barriaux