【5月11日 AFP】北朝鮮観測筋によると、北朝鮮の一般市民が食料や生活用品を自由に売り買いできる自由市場の規制強化に当局が乗り出し、市民の間で不満がくすぶり始めているという。

■90年代の飢饉で自由市場が台頭

 北朝鮮は計画経済体制を取っているが、1990年代後半の深刻な飢饉(ききん)に直面して以降は配給制度が機能停止に陥り、自由市場が急激に台頭した。当局も、2002年に導入した経済改革でこうした市場に一定の役割を認めており、自由市場は小規模の商人らの生命線となってきた。

 ところが当局は2005年以降、再び規制路線に政策を転換。海外から輸入した食品や生活用品などを売っていた露店業者の摘発を強化し始めた。

■規制強化に反発広がる

 韓国・ソウル(Seoul)に拠点を置く北朝鮮情勢の調査NGO「良い友人(Good Friends)」によると、直近では、3月8日の最高人民会議の代議員選挙後に、市場の営業時間を午後1時から5時間に限定する規制が出された。販売品目も限定され、米の販売は不可となったという。

 北朝鮮内部に幅広い情報網を持つ同NGOの李承龍(イ・スンヨン、Lee Seung-Yong)代表は、指定市場や行商人の摘発や罰金の徴収などが、北朝鮮全土で頻繁に行われていると指摘する。「これまでのところ、組織的な抗議運動は報告されていないが、北朝鮮市民らも陰では不満を口にし始めている。不満は日増しに高まり、北朝鮮全土に拡がっているようだ」

 中国との国境地域では4月、北朝鮮当局者がトラックに積んだ拡声器で、禁輸品の販売や購入は重罪で処罰の対象となるとの警告を流した。しかし、こうした当局の行為に対しても、市民は反発を強めているという。

■止まぬ密貿易、規制緩和は避けられず

 当局の締め付けで商人の数は激減した一方で、依然として違法な密貿易は拡大している。ある露店商の女性は、表向きは農産物を販売しつつ、隠れて禁制品の販売も行っていることを「良い友人」に明かした。もちろん、当局に見つかれば全て没収されるという。

 こうした状況に専門家らは、政府が国民の抵抗を受けて市場規制を緩和せざるを得なくなると見る。韓国・サムスン経済研究所(Samsung Economic Research Institute)の林秀虎(イム・スホ、Lim Soo-Ho)氏は、「北朝鮮当局はジレンマに陥っている。市場規制を強めれば、闇市場が拡大し税収の低下につながるからだ」と指摘。地位の低い官僚らは、高官よりも市民の不満に敏感で、取り締まりの強化には消極的だと話した。(c)AFP/Lim Chang-Won