【2月21日 AFP】通話にはじまりメール、ネット接続とサービスを拡大してきた携帯電話で、全世界数百万人を対象にした新たな医療サービスが近い将来始まるかもしれない。

 携帯電話を「ポケットの中の医師」として利用するこのアイディアは、スペインのバルセロナ(Barcelona)で開催中の業界最大の見本市「Mobile World Congress」で大きく動き出した。

 貧困国でのさまざまな使用方法が想定されるなか、関係者は、ワクチン接種や薬の服用、HIV検査などを通知するサービスが実現可能である点を強調した。

 また、遠方で治療を行う医師や看護師が、現地の患者の情報や疫病の流行を携帯電話で通信することも可能だという。

 英通信大手ボーダフォン(Vodafone)のテリー・クレーマー(Terry Kramer)戦略主任は「発展途上国に携帯電話が22億台、コンピューターが3億500万台ある一方で、病院のベッドが1100万床しかないという状況を考えると、携帯電話が医療の問題に効果的な方策を提供する可能性のあることが分かると思う」と語った。

■26か国ですでに試験実施

 ロックフェラー財団(Rockefeller Foundation)と国連財団(UN Foundation)、ボーダフォン財団(Vodafone Foundation )は今週、医療分野におけるモバイルテクノロジーの使用を促進するためのパートナーシップ「Mobile Health (mHealth) Alliance」を発表した。

 また、国連とボーダフォンは報告書を発表し、26か国でのプロジェクト51件を紹介した。最多はインドで11件、次いで南アフリカとウガンダで6件実施されている。

■ウガンダではエイズ啓発に

 ウガンダでは、アフリカの携帯電話会社Celtelの電話網を利用する地方部の登録者1万5000人に対し、エイズ(HIV/AIDS)についての選択式クイズを送信するという試みを行った。

 間違った解答をした場合には正解が送信され、全問解答すると無料通話時間がもらえる。クイズの最後には、地元の医療施設でHIV検査とカウンセリングを受けるよう呼び掛けるショートメッセージが送信される仕組みだ。

 その結果、5人にほぼ1人が反応を示し、6週間のプロジェクト期間中に、医療施設で検査を受けた人数が1000人から1400人に増加したという。

 携帯電話につなぐと計測した血糖値を担当医に送信できる糖尿病患者向けの装置や、心疾患やアルツハイマー病患者のモニターにも利用したケースもある。

■革新技術で公的制度の負担軽減狙う

 国連財団のDaniel Carucci氏は「革新的な技術の採用で、公共医療システムの負担を軽減することができる」と語った。(c)AFP/Katell Abiven