【1月18日 AFP】20日に退任するジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領が「置きみやげ」として残したフランス産チーズへの破格の関税に対する抗議の印として、仏ロックフォール(Roquefort)村のチーズ生産者たちがバラク・オバマ(Barack Obama)次期米大統領のもとに16日、においのきつい同地方特産の羊のブルーチーズ(青カビチーズ)1ケースを送った。

 在任中8年間にわたり米仏関係を緊張させてきたブッシュ大統領は、フランスではすでにまったくの嫌われ者となっているが、退任間近のここへ来てフランス産羊のチーズに300%もの関税をかけ、フランスの羊飼いたちに最後の一撃を浴びせた。

 高額の関税により羊の乳から作る高級ブルーチーズに対する需要が少ない米国の市場から実質的に排除されたと感じたロックフォール村のチーズ生産者たちは、ブッシュ氏の新政策の撤回をオバマ次期大統領に求めるため今回の行動に出た。
 
 また、ロックフォール村のあるミディ・ピレネー(Midi Pyrenees)地域圏のマルタン・マルヴィ(Martin Malvy)地域圏議会議長もオバマ氏の就任祝いとして、特製の密閉箱に入ったロックフォール・チーズを贈った。マルヴィ議長は「オバマ氏就任は、特に米国と欧州の関係改善にとって大きな希望だ。そこでわたしもこのプレネーの格調高い特産品を贈った」と述べた。

 年間生産量1万8500トンのロックフォールの羊のブルーチーズのうち米国に輸出されるのはわずか2%。しかし世界的な経済状況の悪化に伴いブッシュ政権が関税を大幅に引き上げたことにより、フランスとの貿易戦争の影がちらつき始めた。

 ブッシュ政権はロックフォール・チーズに対する関税引き上げについて公式には、欧州では使用が禁止されている成長ホルモンが投与されることが多い米国産牛肉の輸入をフランスが禁止したことへの対抗措置だと説明しているが、欧州各国の政府高官は米政権の動きの背景には保護主義的な傾向があるのではないかと疑っている。(c)AFP