いまだに続くソ連崩壊後の余震、天然ガス問題にも影響
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【1月8日 AFP】昨夏のロシアとグルジア間の紛争に続き、現在起きているロシアとウクライナの天然ガス供給をめぐる問題は、ソ連崩壊後の余震がいまだに弱まっていないことを浮き彫りにしている。
かつてソビエト連邦として知られた広大な国土と多様な民族においては、言語からインフラまであらゆる点での深いつながりが、21世紀の今も追い求めるべき、あるいは阻害するべき、中心的政策であり続けている。
ソ連は1991年、たった1つの署名で名目上崩壊したが、最近の天然ガスをめぐる複雑な状況から明らかなように、実際には現在も解体作業は進行中なのだ。
■ロシアにとって旧ソ連諸国は今も属国
モスクワに拠点を置く米資本のシンクタンク、カーネギー国際平和財団モスクワ・センター(Carnegie Moscow Centre)のドミトリー・トレーニン(Dmitry Trenin)所長は、「かつて自国の行政下にあった、あるいは領土の一部だった国々と新たにやり直すことは容易ではない。ロシア人の多くは今もウクライナを自国の領土と見なしている」と語った。
専門家らによると、旧ソ連14か国を属国と見なす、数世紀の歴史の中で植え付けられたこのロシアの潜在的傾向がまさに、天然ガス問題の少なくとも1つの要因となっているという。
現在、ラトビア、リトアニア、エストニアの3か国は欧州連合(EU)加盟国となり、ウクライナとグルジアは欧州の支援を受けEU加盟を目指している。カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタンは、戦略的な旧ソ連の中央アジア諸国で影響力を固めたいと切望するほかの諸大国が取り込もうとしており、米現政権から「欧州最後の独裁国家」と呼ばれたベラルーシでさえ、欧州との関係改善に興味を示している。
この傾向が、20世紀の大半においてユーラシア大陸の権力の中枢であり、ソ連統一の原点だったロシアを、神経質かつ不満にさせている。
■旧ソ連諸国への欧米介入に不満のプーチン首相
ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相はかつて、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的大惨事」と呼んだことがある。プーチン首相は、ソ連を復活させたいと述べたことはないが、その発言は現在の天然ガス問題とも共鳴している。
同首相はまた、ここ数年、ロシア近隣諸国への米国の戦略的介入に対し、あからさまに反発を募らせている。米国の介入が最も顕著なのがウクライナとグルジアで、両国では過去4年、欧米諸国が称賛した大衆蜂起で、親露政権が失脚し、親米政権に転換している。
■ロシア側譲歩の見込みはなし
プーチン首相は12月31日、ドミトリー・メドベージェフ(President Dmitry Medvedev)大統領とともに姿を現し、ウクライナが同国を経由して欧州へ輸出されるロシア産天然ガスの供給を妨害するなら、ウクライナは「深刻な結果」を覚悟するべきだと警告した。
現在、欧州諸国ではロシア産天然ガスの供給不足が報じられ、ロシア政府はウクライナが天然ガスを「抜き取っている」と主張、ウクライナ側はロシアの意図的な供給削減を埋め合わせようとしているだけと応じている。
プーチン首相が、この天然ガス論争で生じた混乱に、どのように対応するかは依然として不明だ。
長期的な行き詰まりは両国にほとんど利益を及ぼさないが、専門家らは、昨夏のグルジア紛争でウクライナが直ちにグルジア支援に回ったことに激怒しているロシアが、天然ガスを巡る問題で譲歩する様子は見られないと指摘する。
■ウクライナ向けと欧州向けの切り離しは不可能
今回の状況は、欧州にロシア産天然ガスを供給するパイプライン網の、核心となっている現実を突きつけている。つまり、ロシアとウクライナがソ連として単一のガス輸出国家であった時代に作られた統合システムだということだ。
数式や人間同士の信頼関係といったことは別として、ロシア産ガスのウクライナ向け輸出と、そのはるか先にある諸外国向け輸出を切り離す、構造的な方法は存在しないということだ。(c)AFP/Christopher Boian
かつてソビエト連邦として知られた広大な国土と多様な民族においては、言語からインフラまであらゆる点での深いつながりが、21世紀の今も追い求めるべき、あるいは阻害するべき、中心的政策であり続けている。
ソ連は1991年、たった1つの署名で名目上崩壊したが、最近の天然ガスをめぐる複雑な状況から明らかなように、実際には現在も解体作業は進行中なのだ。
■ロシアにとって旧ソ連諸国は今も属国
モスクワに拠点を置く米資本のシンクタンク、カーネギー国際平和財団モスクワ・センター(Carnegie Moscow Centre)のドミトリー・トレーニン(Dmitry Trenin)所長は、「かつて自国の行政下にあった、あるいは領土の一部だった国々と新たにやり直すことは容易ではない。ロシア人の多くは今もウクライナを自国の領土と見なしている」と語った。
専門家らによると、旧ソ連14か国を属国と見なす、数世紀の歴史の中で植え付けられたこのロシアの潜在的傾向がまさに、天然ガス問題の少なくとも1つの要因となっているという。
現在、ラトビア、リトアニア、エストニアの3か国は欧州連合(EU)加盟国となり、ウクライナとグルジアは欧州の支援を受けEU加盟を目指している。カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタンは、戦略的な旧ソ連の中央アジア諸国で影響力を固めたいと切望するほかの諸大国が取り込もうとしており、米現政権から「欧州最後の独裁国家」と呼ばれたベラルーシでさえ、欧州との関係改善に興味を示している。
この傾向が、20世紀の大半においてユーラシア大陸の権力の中枢であり、ソ連統一の原点だったロシアを、神経質かつ不満にさせている。
■旧ソ連諸国への欧米介入に不満のプーチン首相
ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相はかつて、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的大惨事」と呼んだことがある。プーチン首相は、ソ連を復活させたいと述べたことはないが、その発言は現在の天然ガス問題とも共鳴している。
同首相はまた、ここ数年、ロシア近隣諸国への米国の戦略的介入に対し、あからさまに反発を募らせている。米国の介入が最も顕著なのがウクライナとグルジアで、両国では過去4年、欧米諸国が称賛した大衆蜂起で、親露政権が失脚し、親米政権に転換している。
■ロシア側譲歩の見込みはなし
プーチン首相は12月31日、ドミトリー・メドベージェフ(President Dmitry Medvedev)大統領とともに姿を現し、ウクライナが同国を経由して欧州へ輸出されるロシア産天然ガスの供給を妨害するなら、ウクライナは「深刻な結果」を覚悟するべきだと警告した。
現在、欧州諸国ではロシア産天然ガスの供給不足が報じられ、ロシア政府はウクライナが天然ガスを「抜き取っている」と主張、ウクライナ側はロシアの意図的な供給削減を埋め合わせようとしているだけと応じている。
プーチン首相が、この天然ガス論争で生じた混乱に、どのように対応するかは依然として不明だ。
長期的な行き詰まりは両国にほとんど利益を及ぼさないが、専門家らは、昨夏のグルジア紛争でウクライナが直ちにグルジア支援に回ったことに激怒しているロシアが、天然ガスを巡る問題で譲歩する様子は見られないと指摘する。
■ウクライナ向けと欧州向けの切り離しは不可能
今回の状況は、欧州にロシア産天然ガスを供給するパイプライン網の、核心となっている現実を突きつけている。つまり、ロシアとウクライナがソ連として単一のガス輸出国家であった時代に作られた統合システムだということだ。
数式や人間同士の信頼関係といったことは別として、ロシア産ガスのウクライナ向け輸出と、そのはるか先にある諸外国向け輸出を切り離す、構造的な方法は存在しないということだ。(c)AFP/Christopher Boian