【12月20日 AFP】新興企業とベンチャーキャピタルの両方にとって2009年は試練の年になりそうだが、2010年には荒れ果てたマーケットから不死鳥のごとくスーパースターが登場するかもしれない――全米ベンチャーキャピタル協会(National Venture Capital AssociationNVCA)は17日、毎年行っている調査の結果を発表し、このような見通しを明らかにした。

 今年の調査は全米400のベンチャーキャピタルを対象に11月24日から12月12日にかけて行われた。回答者の多くが2009年はベンチャービジネスの起業家や投資家にチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)流の適者生存の法則が厳しく襲いかかる年になると感じていることが明らかになった。

「2009年はおそらくひどい1年になるだろう」とマーク・ヒーソン(Mark Heeson)NVCA会長は語る。「しかし、2010年になれば状況は改善するとみている。キーワードは『生存(Survive)』だ。ベンチャーキャピタルの間では2009年に市場は焼け野原になるが、2010年にはその灰の中から数多くの不死鳥が生まれるとの見方が多い。2010年は重要な年になるだろう」

 投資家たちが有望視しているのは、世界的に注目が集まっているクリーンな燃料とバイオテクノロジーの分野だ。ただし、2009年のベンチャーキャピタルの動きは、すでに出資した企業の支援が中心となり、新規事業への投資の勢いは弱まるとみられる。

 ベンチャーキャピタルは通常、出資した会社が新規株式公開(initial public offeringIPO)するよう支援し、上場で得た資金で別の新たな事業を育てる。しかしIPO市場も今回の国際的な金融危機の影響を免れなかった。ヒーソン会長によると今年IPOした米企業の数は前年から激減したという。

 調査に回答したベンチャーキャピタリストの92%が、2009年の投資は10%以上減速すると予測した。ここ数年は300億ドル(2兆7000億円)程度で推移してきた年間の投資総額も、来年は270億ドル(約2兆4000億円)を下回りそうだ。

■勝者は不況時にこそ生まれる

 しかしこうした中でも、今年と同程度の投資を行うと回答したベンチャーキャピタルは調査対象の半数を超えた。賢明なベンチャー投資家ほど厳しい不況時にこそ勝者となる企業が生まれることを知っている、とヒーソン氏は語る。

「景気が悪いときに打って出ようという起業家は物見遊山の観光客ではない、ということだ。そうした状況で起業しようという人物は自分のアイデアに強い自信を持ち、自制心が強く、モチベーションが高い。そうした連中は資金を手にする。最良の企業は景気が最悪のときに資金を得るものだ」

 2009年は、不況の影響が大きい半導体、メディア、無線通信関連への投資は大失敗するとの見方がベンチャーキャピタリストの間の共通認識だ。また、投資の減速は世界的な傾向だが、特に欧州で顕著だろうという見方も多い。

「経済危機で淘汰がかなり進むが、ベンチャーキャピタリストにとって2009年は将来に期待をかける年になるだろう」とヒーソン会長は語る。「不況とIPO市場の不調で、投資家は投資先の選定方法を根本から見直して投資先を絞り込むだろう。しかし、それは真に革新的で素晴らしいアイデアを持った起業家は、不況であっても資金を獲得できるということでもある」(c)AFP