【12月7日 AFP】最高時速330キロの中国の最速列車で北京(Beijing)から天津(Tianjin)へ出張に向かっているある中国人ビジネスマンは、中国全土を結ぶ2兆元(約27兆円)規模の新たな鉄道開発計画を手放しで称賛する。

「今や人々は便利な交通手段を求めている。高速列車が全土に整備されれば誰にとっても便利になるだろう」とこの男性は話す。北京-天津間は、8月に路線が2倍に延長され所要時間はわずか30分となり、これまで2日かかっていた出張が1日で済むようになったという。

 中国政府は最近、世界的な経済危機の中で景気を刺激するため、今後2年間で鉄道網整備に2兆元(約27兆円)規模の投資を行うことを承認した。中国鉄道省によると、今後は全長7万9000キロの鉄道網を、2020年までに12万キロに拡張する長期計画をたてているという。

 現在の経済危機では、経済刺激策としてインフラ投資は有効だとする専門家もいるが、それだけではなく鉄道開発への投資は、ほかの分野と比べて置き去りにされてきた運輸業界が切望していたものだ。

 中国の鉄道開発は長い間停滞している。鉄道交通は中国の経済・社会成長の障壁となっており、また運輸業界の弱点でもあるため、さらなる拡張が必要とされる。

 中国の広大な鉄道網はすでに世界有数だが、好景気が続く中で国民13億人の移動のニーズに応えることは難しい。旧正月の休暇を見れば、この国の鉄道システムの問題は明らかだ。どこの駅でも、帰省のため必死に電車に乗り込もうとする人々で大騒動となる。

 また、中国の国土の大きさと、石炭などの天然資源を街から遠く離れた地域まで運ぶ必要があることを考えても、鉄道網の整備の重要性は明白だ。

 アジア開発銀行(Asian Development BankADB)の中国運輸担当者によると、中国では現在、必要な貨物輸送の約35%しか行えておらず、鉄道システムが輸送可能人数とサービスの面で改善されれば、貨物・旅客の輸送の両方でコストと時間が節約でき、中国経済全体に恩恵を与えることになるという。

 一方、景気刺激のために、ほかの優先事項を犠牲にしてインフラに過剰投資するのを警戒する向きもある。香港城市大学(City University of Hong Kong)政治学教授のジョセフ・チャン(Joseph Cheng)氏は、「中国はインフラ計画だけでなく、教育や高齢者サービス、医療といった社会サービスに投資しているべきだ」と指摘した。(c)AFP/Marianne Barriaux