【11月25日 AFP】米自動車大手3社(ビッグスリー)のいずれか1社でも破たんすることになれば、世界の競合メーカーが米国内に置く生産ラインにも深刻な混乱が起き、それらの企業が共有している供給ベースは崩壊するだろうと、専門家らが懸念している。

 ゼネラル・モーターズ(General Motors、GM)、フォード(Ford)、クライスラー(Chrysler)の3社のトップは前週米議会の公聴会で、世界的な金融危機のなか、米自動車業界は「壊滅的な崩壊」に直面していると訴え、公的資金による救済策を求めた。

 しかし、民主党は20日、3社から再建計画の提出がない限り応じられないと採決を断念、緊急措置への期待は打ち砕かれた。12月までに計画が提出されれば再検討される可能性は残されたが、大幅な生産削減を盛り込むことは避けられないだろう。

■部品メーカー共有、1社でも倒れればトヨタまで波及

「ビッグスリー」に対する250億ドル(約2兆4000億円)の緊急支援が米議会で認められるか否かにかかわらず、米国内の自動車市場においてアジア勢や欧州勢のシェアは伸びるだろう。しかし、米自動車大手の1企業でも破たんすれば、外国勢にとっても痛みをもたらすと専門家は言う。どちらも同じ部品メーカーに依存しているからだ。

「GMが破たんとなれば影響は深刻で、トヨタ(Toyota)にまで関係してくる。次々とサプライヤーがつぶれていけば滝が連鎖するように、大手から下請けの最下位まですべてに広がる。ボルト1個やチップ1枚だけが足りなくても、部品は出荷できないだろう」と、オート・トレンズ・コンサルティング(AutoTrends Consulting)のアナリスト、ジョー・フィリッピ(Joe Phillippi)氏は語る。

 米国内の2007年の生産台数1080万台のうち3分の1は、アジア系か欧州系メーカーの工場で組み立てられたものだ。ビッグスリーが生産を減らせば、その比率はさらに上がると予測される。

 現在開催中のロサンゼルス自動車ショー(Los Angeles Auto Show)に出展しているある日本メーカーの幹部は、ひとつの破たんが米経済全体のさらなる崩壊を招き、ひいては自動車販売全体も急激に冷え込むと懸念し、この状況で得をする者は誰もいないと悲観する。

■日産、トヨタも危機感

 同ショーの基調演説で日産自動車(Nissan)のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn )社長は、米市場がいつ上向きになるのかは予測できず、信用収縮で売り上げは悪化する一方であると警告した。

 さらにゴーン氏は、最も健全なメーカーでさえも資金調達の方法を見いだせず、ビッグスリーの危機はやがて米国を越え欧州やアジアへと拡大するとも明言した。

 米企業のライバル、トヨタの幹部たちも米自動車業界との結束を口にする。同社の現地法人である米国トヨタ自動車販売(Toyota Motor Sales USA)のボブ・カーター(Bob Carter)副社長は「これは、われわれ対ライバルという対決状況ではない」と述べ、業界全体が米国内外で部品サプライヤー数百社を共有している点に触れ、ビッグスリー、なかでもGMが破たんした場合、ドミノ効果が業界全体に波及すると指摘した。

 ビッグスリーへの融資法案が議会を通過しなかった場合、GMでは1月にも手元資金が底をつくと表明しており、破たん申請することになれば再編どころか事業清算となると訴えている。クライスラーとフォードも急速に手元資金が不足しつつあることを明らかにしている。(c)AFP/Paul Eisenstein