【10月3日 AFP】世界最大級の自動車ショー「パリ・モーターショー(Paris Motor Show)」が2日、報道・業界関係者向けに公開された。4日から19日まで一般公開される。

 2年に1回開催されるこのショーは今年、自動車業界にも波及してきた金融危機の影響が影を落とす中、世界25か国、362社の自動車メーカーが参加している。90に上る新モデルや多数のエコ技術が宣伝される中、ブース裏の会見スペースでは各社経営トップが暗い市場予測を口にする。

 原油高騰、環境に関する新規制、販売台数の減少は、モーターショーの準備段階からすでに懸念されていたが、自動車業界に残っていたわずかな余力に、信用収縮がさらに追い打ちをかける可能性もある。

■各メーカー経営トップら、暗い市場予測

 独BMWグループのノルベルト・ライトホーファー(Norbert Reithofer)取締役会長は、2008年の業績は前年より改善されるが、09年も厳しい状況が続くと予測する。仏ルノー(Renault)のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)社長も販売減少の見通しを示し、「財政状態は非常に不安定で、業績不振につながる可能性もある」と述べた。

 米調査会社グローバルインサイト(Global Insight)が1日にウェブサイトに掲載した報告では、さらなる信用制限で、9月の欧州の自動車販売台数は約25%減となる可能性もあると指摘。年率換算でも1990年代前半の景気後退の時期の水準に落ち込んでいる。

■ハイブリッドカーで対応

 メーカー各社はこの状況に、新モデル、特に燃料高騰と環境を懸念するドライバー向けの小型車で対応している。

 日本勢は、トヨタ(Toyota)が中型乗用車「アベンシス(Avensis)」、小型車「アーバンクルーザー(Urban Cruiser)」、超小型車「iQ」の3モデルを、ホンダ(Honda)がトヨタのプリウス(Prius)に対抗するハイブリッドカー「インサイト(Insight)」を、日産(Nissan)が電気自動車のコンセプトカー「ニューヴ(NUVU)」を発表する。

 米ゼネラル・モーターズ(General MotorsGM)は、欧州で初めてハイブリッドカー「シボレー・ボルト(Chevrolet Volt)」を発表するが、業界第1位への返り咲きを狙ったものとみられている。

 高燃費の高級車で知られてきたドイツ各社は、欧州連合(EU)の環境規制に対応し、小型の四輪駆動車に焦点をあてた。

 フランスのプジョー(Peugeot)とシトロエン(Citroen)も、それぞれハイブリッドコンセプトカー「プロローグ(Prologue)」と「イプノス(Hypnos)」を、ルノーも「オンデリオス(Ondelios)」を発表する。

■アナリストも暗い見通し示す

 しかしながら、アナリストらは、自動車業界の2009年の予想は楽観的とはほど遠いと認めている。自動車市場予測サービスを提供する「CSMワールドワイド(CSM Worldwide)」のマーク・フルソープ(Mark Fulthorpe)氏は、「現状で新モデルを発表するのは理想的とは言えない」と指摘した。

 原油価格は歴史的な高値を付けた後、世界経済が冷え始めたことから下落し、販売増加を期待する見方もある。だが自動車業界が一息ついたところで、米国発の金融危機が信用収縮を引き起こし、かつて購入者を引きつけるために利用されてきた個人ローンの利用も難しくなっている。

 自動車情報業「R. L. Polk」のバートランド・ラトコ(Bertrand Ratko)氏は、自動車業界の回復は早くても2010年になると予想し、「現在、楽観的見通しを示す人はいなく、誰もが予測を下方修正している」と語った。(c)AFP/Simon Boehm