【9月29日 AFP】米政府・議会が28日合意した金融安定化法案(Troubled Asset Relief ProgramTARP)の草案について、アナリストの間では金融市場の沈静化を期待する一方で、新たなリスクにつながる可能性もあるとの声が上がっている。

■最大7000億ドルを段階的に投入

 TARPでは金融機関や年金基金、地方政府などが抱える不良資産を買い取り、米住宅バブルの崩壊に端を発した世界的な金融危機への対処を目指す。金融市場への政府介入としては1930年代の世界大恐慌以来、最大規模となる。

 当初の買い取り資金枠は2500億ドル。最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金投入を可能とする。

 財務省内への設置を含む複数の監視機関で買い取りを監査し、不正行為を防止するほか、財務長官の権限集中を避けるため独立監察官も設ける。

 また、政府が株式を取得した金融機関の業績が回復した場合は、利益を納税者に還元することや、対象金融機関の経営陣の報酬の制限、住宅差し押さえに対する政府の予防策を認めることなども盛り込まれている。

 米調査会社グローバルインサイト(Global Insight)のエコノミスト、ブライアン・ベチューン(Brian Bethune)氏は、1週間以上の激論の末に合意に至った修正案について「米金融システムの生命維持に決定的な役割を果たすだろう」と述べ、「米国の納税者の利益をより積極的に守る合理的な妥協案」だとの見方を示した。

■実効性に疑念、市場の反応次第で逆効果も

 しかし、アナリストの間にはTARPをめぐり、市場や経済に新たな問題をもたらすのではないかとの疑念も渦巻いている。

 米資産運用会社カンバーランド・アドバイザー(Cumberland Advisors)のデービッド・コトック(David Kotok)最高投資責任者(CIO)は、修正前の原案のほうが良かったと指摘。「過度の規制、行き過ぎた監視は、管理とコストを増大させるだけで、金融機関の特権と収益見通しを損なう」と述べ、TARPが金融・銀行部門の健全化の足かせとなる危険を警告する。「もし市場がこれを悪法だと判断すれば、株価は上がるどころか暴落するだろう」(コトック氏)
 
 コンサルティング企業ピーター・S・コーハン&アソシエイツ(Peter S. Cohan & Associates)のピーター・コーハン(Peter Cohan)社長も「短期的には市場は(TARPを)前向きに評価するだろう。ただし、効果が出なければ反応は非常に厳しくなる」と言う。

 さらにコーハン氏は、金利上昇と金融引き締めを招き、自分たち同士の資金融通を困難にした金融機関の緊急課題にTARPは対応するものではないとも指摘。経営陣の報酬制限、不動産の抵当負債の買い取り価格制限などの「阻害要因」が障害となって、TARPの適用を求める金融機関がどれくらい出てくるかは不明だとも述べた。(c)AFP/Rob Lever