【7月2日 IDO Securities】
 サウジでの産油国と消費国とのジェッダ会合(6/22)で、サウジが原油生産能力を2009年末までに現在の1.25倍(日量1250万バレル)、将来的には1500万バレルに拡大する方針を示したものの、①他の産油国の追随増産に至らずOPECの足並みの乱れが浮き彫りとなったこと、②ガソリン等の得率が低いサウジの重質油を増産しても、米国の精製能力不足に起因する石油製品供給逼迫は解決されないとの見方も強く、弱材料視されなかった。その後、ナイジェリアの石油労働者のストライキや、武装勢力による石油関連施設への攻撃で供給障害が懸念される中、利上げ期待の後退によるドル安やリビア減産検討(6/26)、OPECヘリル議長発言(150~170ドルへレンジが切り上がる)などを受けて、NY原油は130ドル~140ドルのもち合いを上抜け、史上最高値更新となっている。

 米商品先物取引委員会(CFTC)は、6月23日の米下院エネルギー・商業委員会で、9月15日までに、米議会に調査結果を報告する意向を明らかにしたが、自らが商品価格のリスクにさらされるスワップ・ディーラーなどは、先物市場を利用せずに相殺してしまうケースも多く、商品指数取引の全体量を規制当局が把握するのは難しいとの見解も表明しており、効果的な方策がすぐに出てくる可能性は低いとマーケットは見透かしている。また、CFTC建玉明細によると「商品投資に対する規制強化の思惑」で、大口投機玉の買い越しは、3月のピーク時から6月には大幅に減ったが、価格は下がることなく推移しており、反対に短期筋の新たな買い余力を生む結果となっている。

 NY原油の7月の陽線確率は、70%を超えており、ハリケーンシーズン本番を控え、例年の季節傾向通り、夏高に向けた動きが意識されやすい地合となろう。140ドル水準を固めてくるようだとオプションの偏りがある150ドルへ向けた展開が想定される。投機資金の流入が原油価格上昇の一因であるものの、先進国での精製能力不足や、エマージング諸国を中心とする実需の強さが根底にあり、このファンダメンタルズ面からの構図が崩れない限り、修正を入れながら長期上昇トレンドは継続すると見られる。

 ここにきてイスラエルとイランとの地政学リスクが高まりを見せており、Ⅹデーは、大統領選挙に影響を与えず、しかも、新大統領の決断を待たずに出来る時期である米国大統領の引き継ぎ期間との声も出ている。
 テクニカル面からは上値が大きく切りあがった事で、100ドル水準への修正があったとしても長期上昇トレンドの単なる押し目と見なされるだろう。

 要注意は、ここにきての世界的な株価下落傾向だ。昨年は、2月末~3月初旬、8月の世界同時株安を受けて、リスクマネー収縮の動きから商品市場も大幅修正となった。「株価急落→信用収縮→需要減少」と言う悪循環に陥った場合、修正幅は短期的かつ大きくなる可能性は高い。各市場とも独立記念日前後の薄商いでの乱高下にも注意したい。

 さらに、洞爺湖サミットでは、バイオ燃料と農産物の輸出規制に絡んだ穀物価格の高騰対策が採り上げられる予定で、原油価格高騰の悪影響が米大統領選挙の候補者ディベートの論点にも上がる事は必至の情勢であり、市場原理を無視した政治的な圧力(投機規制・在庫放出など)にも注意したい。

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