【6月16日 AFP】13歳のエサム・フセイン(Essam Hussein)君は、エジプトの首都カイロ(Cairo)中心部にある小さな修理工場に、排水管を運ぶ仕事をしている。エジプトには、将来のために、彼のように働かざるをえない子どもが数十万人存在する。

「学校は嫌いさ。ここが好きなんだ」と、エサム君。兄弟たちと一緒にいつか、自分たちの修理工場を持ちたいと考えている。近くの作業所では、15歳のモハメド・ハッサン(Mohammed Hassan)君が働いている。「夏休みの間だけ働く」という彼の1週間の稼ぎは、40エジプトポンド(約800円)だ。

 故障した車のエンジンを直したり、道端で花を売ったり、ナイル・デルタで綿花を摘んだりと仕事はさまざまだが、街角で、路地で、ほこりっぽい作業場で、10歳前後の子どもたちが日中から働いている。

 エジプトの子どもの10人に1人は、働かざるをえない状況にある。ユニセフ(UNICEF)は、エジプトの6-14歳児の就労人口を270万人と推定している。エジプトの人口8000万人のうち3分の1が15歳未満だが、そのうち10%が労働を強いられていると指摘する。また、彼らの労働環境は劣悪な場合が多いという。

 だが、児童労働の撲滅を宣言しているエジプト政府は、労働している子どもは3%に過ぎず、しかも「季節労働」に限られているとしている。

 エジプトは世界10位の綿花生産高を誇るが、5月からの収穫期には約100万人の子どもが駆り出され、1日11時間労働をさせられていると、ユニセフは指摘する。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)によると、子どもたちの労働時間は1日あたりの法定労働時間6時間をはるかに超えており、また働く子どもの大半は7歳から12歳だという。

 国民の20%が貧困ライン以下、もう20%が貧困ライン上ぎりぎりの暮らしをしているエジプトでは、子どもは必須な働き手であり、子どもの労働は当たり前の光景となっている。

 ユニセフと協力して子どもの人権向上に取り組む国際ネットワーク「Terre Des Hommes」のピエール・フィリップ(Pierre Philippe)氏は、「特に低学年で、教師から暴力を振るわれた、と訴える子どもは多い。彼らは学校へ行くよりは仕事をしてお金を稼ぎたいと考える」と話す。

 エジプトは1990年の「子供の権利条約(Convention on the Rights of the Child)」を批准している。2年前にはスザンヌ・ムバラク(Suzanne Mubarak)エジプト大統領夫人が国際労働機関(International Labour OrganisationILO)と共同で「子どもの労働にレッドカード」キャンペーンを展開するなど、政府はたびたび啓発に力を入れているが、同条約の内容は無視され続けている。(c)AFP/Maya El Kaliouby