【6月9日 AFP】燃油高騰の直撃を受けている航空業界では、各社がなりふり構わぬ経営努力を重ねている。経営トップたちは「9.11同時多発テロ以来最悪の経営危機」と言ってはばからない。

 ドル下落を受けた6日の原油市場は、ニューヨーク(New York)で史上初の1バレル=139ドル台に突入、ロンドン(London)でも138ドルと依然として高値が続いた。

 ドル安により原油などドル建てで取り引きされる商品に割安感が出ると、原油需要がさらに強まるおそれがある。とりわけ、運営コストのかなりの部分を燃料費が占める航空業界は、原油価格高騰の波をまともにかぶる。

■ルート短縮、便数削減、従業員解雇とあらゆる生き残り策
 
 1バレル=125円の原油価格で航空各社が利益を上げるためには、運賃を15-25%値上げする必要があるとスイス金融大手クレディ・スイス(Credit Suisse)のアナリストは予測する。「1社が値上げに踏み切れば、他社もこぞって追随するだろう」

 これまでのところ、痛手が最も大きいのは米国の航空会社だ。

 コンチネンタル航空(Continental Airlines)は5日、原油高騰をうけ、従業員3000人を解雇し、旧式航空機67機の使用を止めると発表。ラリー・ケルナー(Larry Kellner)会長兼CEOとジェフ・スマイゼック(Jeff Smisek)社長は「航空業界は危機的状態にある。従来のビジネスモデルでは、現在の原油高騰や市場規模に対応しきれない」と悲鳴をあげる。

 前日の4日にはユナイテッド航空(United Airlines)の親会社UALが、1100人の解雇と100機の削減を発表した。米航空業界1位のアメリカン航空(American Airlines)の親会社AMRも、2週間前に同様の削減計画と運賃値上げを発表している。

 前年の2万1710人に続き、今年これまでに米航空業界は2万2000人の人員を削減した。オーストラリアや東アジアの航空会社、ヨーロッパで台頭する格安航空会社も、業界の先陣に立つ米航空会社に追随する気配だ。

■格安航空各社も明暗分かれる

 アイルランド・ダブリン(Dublin)を本拠とするライアンエア(Ryanair)は、前週発表した2007/2008年の決算で純利益10.3%増を達成した。同社は次年度もかろうじて黒字を保つ見込みだが、他の格安他社は窮地に陥る危険があると予測している。

 ライアンエアのマイケル・オレアリー(Michael O'Leary)最高経営責任者は「原油価格高騰や業界不況で生き残ることが可能なのは、燃費効率の良い安価な航空機で稼働する格安航空会社。低コストの運営体制でめざましいキャッシュバランス成果をあげ、純負債が少なく、不況をコスト削減や効率性向上の好機ととらえる経営陣を擁しているからだ」と胸を張る。

 強気のオレアリー氏は、冬期には航空機の10%を地上待機とし、平均5%の運賃値上げに踏み切る考えを示した。

 一方で、ビジネスクラス専用格安航空会社、英シルバージェット(Silverjet)は5月末に運行を停止している。

 英格安航空イージージェット(easyJet)傘下の独イージージェット・ジャーマニー(easyJet Germany)のジョン・コールザート(John Kohlsaat)CEOは、「欧州航空会社の数社は撤退に追い込まれるだろう。理論上は、半数が経営危機状態にある」と、独ターゲス・シュピーゲル(Tagesspiegel)紙に語った。

■過去6か月で24社が倒産

 国際航空運送協会(International Air Transport AssociationIATA)によると、過去6か月で24社が倒産しており、原油価格が今後も135ドル前後で推移すれば加盟航空会社の負債総額は61億ドル(約6400億円)に達する見込みだという。

 米航空宇宙機器大手ボーイング(Boeing)の737型機より2割も燃費効率を高めた欧州航空機大手エアバス(Airbus)の新型機のように、燃費重視の航空機開発が進んではいるが、航空各社や乗客らは、まだ突然の運航停止に備える必要がありそうだ。(c)AFP/Thomas Urbain