【6月4日 AFP】米コロラド(Colorado)州デンバー(Denver)の連邦地裁は2日、核兵器工場から流出したプルトニウムなどの放射性物質による汚染で損害を与えたとして、米化学大手ダウ・ケミカル(Dow Chemical)と米航空機大手ボーイング(Boeing)に対して、総額9億2600万ドル(約970億円)の賠償金支払いを命じる判決を下した。

 この命令に先立ち、2006年2月、コロラド州ロッキー・フラッツ(Rocky Flats)核兵器関連工場近くの土地所有者らが訴えていたプルトニウム汚染問題に対し、ボーイングが1996年に一部を買収した国防関連企業Dow and Rockwell Internationalの責任を認める評決が出されていた。

 この集団訴訟は18年前に起こされていたもので、Dow and Rockwell Internationalが工場からプルトニウムを流出させ、周囲の土地を汚染したとして約1万2000人の原告団が訴えていた。特に風下の住宅地は汚染がひどく、住民らは健康や資産価値を脅かすものだとしていた。

 今回の判決では、原告団への補償的損害賠償として、ダウ・ケミカルに6億5330万ドル(約690億円)、ボーイングには5億810万ドル(約530億円)の支払いが命じられたが、その後、両社で7億2590万ドル(約760億円)と変更された。また、懲罰的損害賠償としてダウ・ケミカルに1億1080万ドル(約120億円)、ボーイングに8940万ドル(約94億円)が課された。

 両社は、ロッキー・フラッツ工場での操業契約を交わした米エネルギー省に最終的な責任があるとの見解を示した。ダウ・ケミカルは控訴することも明らかにした。

 ロッキー・フラッツ工場は、デンバーの北西約25キロに位置し、米核兵器用のプルトニウム起爆装置などを製造していた。1953-1975年までダウ・ケミカルによって操業されており、その後は、1994年に工場を閉鎖するまでDow and Rockwell Internationalが操業を行っていた。

 工場操業時の火災や機材からの漏出、ずさんな管理態勢などによって、プルトニウムなどの放射性物質の重大な流出が引き起こされたという。

 1989年、米連邦捜査局(Federal Bureau of InvestigationFBI)と環境保護局(Environmental Protection AgencyEPA)が、環境破壊の容疑で工場内を捜索し、それが引き金となって工場は閉鎖された。(c)AFP