【5月12日 AFP】イタリア自動車最大手フィアット(FIAT)に20日、若干32歳の新しい「皇帝」が誕生する。伝説的ならつ腕で名高い故ジャンニ・アニェッリ(Giovanni "Gianni" Agnelli)元名誉会長の実の孫で、現在副社長を務めるジョン・エルカン(John Elkann)氏が、祖父の築いた「フィアット帝国」を受け継ぐのだ。

 アニェッリ一族は「イタリアのケネディ家」として知られる。御曹司のエルカン氏は、80億ユーロ(約1兆3000億円)相当の金融資産を運用する持ち株会社IFILを、アニェッリ一族の側近ジャンルイジ・ガベッティ(Gianluigi Gabetti)氏(83)から引き継ぐ。IFILはフィアット株30%のほか、銀行グループのインテサ・サンパオロ(Intesa Sanpaolo)株2.4%、伊サッカーセリエAのユベントス(Juventus)株62%も保有する。

■後継者就任は祖父の遺志、英才教育ほどこされる

 エルカン氏の後継者就任は、祖父ジャンニ・アニェッリ氏の指名による。2003年1月に死去するまで50年以上にわたってフィアットを支配し続けたアニェッリ氏は、1997年12月、当時まだ21歳のエルカン氏をフィアットの役員に抜てき、話題を呼んだ。

 エルカン氏は全国紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)とのインタビューで、祖父とともに海や山でアウトドア・スポーツを楽しむ中で危険を顧みず、努力を厭わない姿勢を身に付けたと話している。アニェッリ氏は「一緒にスキーに行った時、わたしを最も難しいコースに挑戦させたり、まだ挑戦したことのない場所を見つけるように仕向けた」という。

■身分を隠して武者修行、祖父らの死でデビュー早まる

 エルカン氏は、ニューヨーク(New York)生まれ。英国やブラジル、フランスなどで幼少時代を送った。94年にパリ(Paris)の中高一貫校を卒業すると、祖父の助言に従ってトリノの大学で生産工学を学んだ。

 卒業後は、フィアットが出資する伊自動車部品メーカー、マニエッティ・マレリ(Magneti Marelli)の英国法人やポーランド・ティヒ(Tichy)にあるフィアットの生産ラインで、身分を隠してインターンシップ(就業体験)を行う。また、仏北部リール(Lille)のフィアットの子会社では、販売員として勤務した。

 01年、米ゼネラル・エレクトリック(General Electric)の監査役として1人立ちし、02年5月にフィアット本社に戻るが、03年に祖父が、翌04年には会長となっていた大叔父が死去したことで、エルカン氏の経営中枢デビューが計画よりも早まる。エルカン氏は03年にIFILに入社、翌04年にフィアットの副会長に就任した。(c)AFP/Etienne Fontaine