【5月6日 AFP】かつてモーゼ(Moses)は、紅海(Red Sea)を2つに割って道を作った。そして今、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指導者、ウサマ・ビンラディン(Osama Bin Laden)容疑者の異母兄弟が、紅海に橋を架けようとしている。

 橋は、アラブ半島のイエメンと「アフリカの角」にあるジブチとを結ぶもので、全長28.5キロ、「世界最長の吊り橋」となる。全6車線で、線路も4本通す計画だ。橋のどちらかの端に新都市を建設し、中継点のペリム島(Perim Island)にはサービスエリアも作る。工期は10年で、総工費は140億ユーロ(約2兆3000億円)。完成すると、アフリカ・アラブ間をシナイ半島経由で移動する必要がなくなる。

 計画を推進している人物は、タレク・ビンラディン(Tarek bin Laden)。あのビンラディンの異母兄弟だ。サウジアラビアの建設業界の首領的存在であるタレク氏は、計画への支援を求めてイエメン、ジブチ両政府へのロビー活動を積極的に展開しており、資金をつのっている段階だ。

 ジブチのディレイタ・モハメド・ディレイタ(Dileita Mohamed Dileita)首相は、「アフリカのイスラム教徒の巡礼者数百万人を、電車かバスでサウジアラビアの聖地メッカ(Mecca)まで運ぶことができるのが、橋の最大の利点」と語った。

 商業上・輸送上の利点のみならず、橋が担うこうした宗教上の意味も、無視することはできない。

 橋のイエメン側かジブチ側の起点にはパリ(Paris)の6倍の大きさを誇る「光の都市(City of Light)」を建設し、貿易、商業、観光のハブに位置づけたい考えだ。

 だが、問題点もある。

 1つは、建設予定地は地震活動が活発な地域で、地殻変動により海底面が変化しやすいこと。もう1つは、橋ができることで、ジブチの港がすたれてしまうのではないかという不安だ。この港は、主に商用のエチオピア車両を年間12万台以上、対岸に運んでいる。

 これについて、ジブチの担当大臣は「ジブチは経済的・政治的にますます安定してきているため、橋と港の双方の利用客が増え続けるだろう」と発言している。 

 また、ジブチには米・仏軍の基地が集中していることもあり、橋がテロリストの標的にされるとの懸念や、イスラム過激派がアフリカに入りやすくなるとの不安もある。(c)AFP/Emmanuel Goujon