【5月3日 AFP】食の権利に関する国連(UN)特別報告官に就任したばかりのオリビエ・デシューター(Olivier de Schutter)氏は、現在起きている世界的食料危機が過去20年にわたる大国の誤った政策によってもたらされたとする見方を示した。2日の仏夕刊紙ルモンド(Le Monde)が伝えた。

 フランス人法学教授で人権活動家としての顔も持つデシューター氏はルモンドの取材に、高騰する食料価格によって世界各地で起きた暴動を予想することができなかったことに対して、国際社会は「責任を逃れられない」と述べた。

 デシューター氏はまた、「これはまさに始まり。格安の食糧があふれる時代は終わった」と述べ、現在の食料危機は「工業化された農業の限界」を示すものとの考えを示した。

 さらに同氏は、「過去20年の過ちのつけが回ってきた。株式市場の低迷した場合、投機資金が原材料市場に向かうことは予想できたが、これを防ぐ手段は何一つ取られなかった」と述べ、これまでの各国の対応を批判した。

 デシューター氏は世界銀行(World Bank)と国際通貨基金(International Monetary FundIMF)が「農業への投資の必要性を過小評価してきた」といい、特にIMFに対しては負債を抱える途上国に食糧自給を犠牲に換金作物の生産と輸出を求めてきたとして非難した。

 食料高騰により10億人の生活が影響を受けているとされるアジアでは、メーデー(May Day)にあたる1日、フィリピン、インドネシア、シンガポール、タイなどで労働者らが価格上昇に抗議して暴徒化する騒ぎが起きた。

 専門家は今回の食料価格の高騰が、各国による貿易制限、食生活の変化による需要ひっ迫、天候不順、トウモロコシなど一部の穀物のみに依存するバイオ燃料の生産拡大、原油価格高騰による輸送費上昇など複数の要因が重なって起きたと説明している。(c)AFP