【10月11日 AFP】ミャンマー政府は9日、宝石の競売を11月に実施すると発表した。宝石は軍政にとっての大きな資金源。反政府デモの武力制圧をめぐり国際的な批判が高まっている時だけに、同国産の宝石をボイコットする動きが広がっている。

 国営紙「ミャンマーの新しい灯(New Light of Myanmar)」によると、競売は11月7日から19日にかけて実施される。競売は今年に入って5回目で、毎回世界中からバイヤーが訪れ、売り上げは1億ドル(約120億円)に上ることもある。貧困国のミャンマーだが、世界のルビーの90%は同国産。豊富なヒスイも隣国中国で高く評価されている。

 しかし同国では約20年ぶりの大規模な反政府デモを軍政が武力制圧し、少なくとも13人の死者を出す事件が起きたばかり。これまでミャンマー産の宝石販売を手控えているのは米ニューヨークの高級宝飾店ティファニー(Tiffany& Co)など少数のみだったが、業界団体のジュエラーズ・オブ・アメリカ(Jewelers of America)はこのほど、「宝石の買い付けによって人権侵害に加担することがあってはならない」として、米国議会に対し、ミャンマー産の宝石を全面禁止するよう訴えた。

 また、高級宝飾ブランドのカルティエ(Cartier)も、ミャンマーで産出された可能性のある宝石の買い入れを当面中止したことを明らかにした。

 ただ、国際的な制裁にもかかわらず、ミャンマー産の宝石は隣国のタイ経由で密輸され、同国でカットされて米国や欧州で販売されている。ミャンマー政府の競売には宝石の闇取引を阻止する狙いがあるが、いまだにタイへの密輸が後を絶たないのが現状だ。

■ルビー採掘の過酷な現状

 ミャンマーのルビー鉱山では労働者が過酷な条件で働かされているとの報道もあるが、鉱山の様子は外部には公開されていない。鉱山労働者の間では、ヘロイン中毒患者の注射針使い回しや売春行為のまん延により、エイズ(AIDS)感染者が急増しているとも伝えられる。

 ミャンマーからの亡命者でつくる団体は、鉱山で強制労働が行われているとして、軍政が実施する競売のボイコットを呼び掛けた。「良識がある人はルビーを買わないでほしい。ルビーはほぼ間違いなくビルマ産だからだ」と同団体責任者は訴えている。

 それでもミャンマーの競売には、特に中国とタイから多数のバイヤーが訪れるのが普通だ。ただ、軍政のデモ制圧以降、ビザの入手は難しくなっている。(c)AFP