【10月7日 AFP】フランス財務省は5日、エアバス(Airbus)親会社の航空防衛大手EADSEuropean Aeronautic Defence and Space Company)株をめぐるインサイダー取引に同省の関与があった可能性について、内部調査を開始したと発表した。

 クリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)経済財務雇用相は声明を発表し、「財務省のBetrand Schneiter監査官に、2005年末から2006年6月までの期間、省がEADSとどのようなやり取りを行ったかを調査するよう指示した」と述べた。財務省は、内部調査の結果を今月11日までにまとめ、直ちに公表するとしている。

 事件が明るみに出たのは、3日付けの仏紙フィガロ(Figaro)が、仏金融市場庁(AMF)の報告で大規模なインサイダー取引が認定されたと報じたことがきっかけ。

 同紙によると、EADS経営陣の21人と民間大株主である仏メディア大手ラガルデール(Lagardere)、独自動車大手ダイムラー・クライスラー(DaimlerChrysler)の経営陣が、EADSの子会社・エアバス(Airbus)の経営悪化発表直前に大量のEADS株を売却したことが、インサイダー取引とみなされた。

 EADS株はフランス政府が15%保有するほか、ドイツの地方自治体などを含む投資家連合が7.5%を保有する。

 現在米ハーバード大学(Harvard University)の経営学部で講師を務めるティエリ・ブルトン(Thierry Breton)前財務相は、5日の上院の特別委員会で、「この問題で民意に強い感情論がもたらされたことはよく理解できる」と述べながらも、「本件について財務省が非難に値することはみじんもない」と仏政府による関与を否定した。

 さらに前財務相は、「エアバス超大型旅客機A380の生産の遅れが2006年6月に公表される以前に仏政府がEADS株を売却した事実はなく、これは株主として模範的行動に当たる」と述べた。エアバスの発表直後、親会社EADS株は急落した。

 野党・社会党(PS)は、フランス預金供託公庫(Caisse des Depots et ConsignationsCDC)によるダイムラー・クライスラーおよびラガルデールが保有するEADS株の買取りがについて問題視している。ラガルデールの最高責任者アルノー・ラガルデール(Arnaud Lagardere)氏はニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領と親しい間柄とされる。

 ブルトン前財務相は委員会での証言で、CDCがラガルデールからEADS株を買い取ったことを知ったとき、「強い不快感を覚えた」と述べた。事前に買取についての報告はなく、報道で事実を知ったと証言している。

 サルコジ大統領のDavid Martinon報道官は、同大統領が前政権で内相を務めていた時期、エアバスの問題を承知していなかったと述べた。

 同報道官は、「事実の解明と公表を求める声が非常に強い」と述べるとともに、この問題の「数々の疑念はすべてが明らかにされなければならない」との大統領の談話を発表した。

 金融市場庁にインサイダー取引容疑を指摘されたエアバスのトーマス・エンダース(Thomas Enders)最高経営責任者は、5日にAFPが入手した同社の社内文書の中で、「報道された容疑と侮辱を断固否定する」と述べている。

 フィガロ紙によると、問題の株取引は2005年と2006年初頭に行われたという。(c)AFP