高まり続ける中国のウイスキー人気
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【6月10日 AFP】若年層のアルコール飲料の好みが、アルコール度数の高い伝統的な「白酒(baijiu)」からウイスキーに変わってきているようだ。
上海や北京など都市部のバーやディスコでは近年、マオタイ酒(Maotai)など有名な白酒を見かけなくなった。その代わり、若者の間ではウイスキーがかつてない人気を博している。クラブなどで夜通し踊り明かすグループが、ウイスキーをボトルで注文する光景も目に付く。
「コニャックがよく売れるのは中国南部に限られるが、ウイスキーは全国で飲まれている」とフランスの飲料メーカー、ペルノ・リカール(Pernod Ricard)の中国事業の責任者、Philippe Guettat氏は語る。
■過去5年の販売量は年率30%増
過去5年間、中国のウイスキー販売量は年率30%の上昇を続けた。最も人気のあるブランドはペルノ・リカールのシーバスリーガル(Chivas Regal)だ。
中国のスピリッツ市場で外国製品が占める割合は10%に満たない。だが、アルコール飲料全体では依然として国産ブランドが圧倒的なシェアを維持していることを考えると、この割合は決して低くはない。
ペルノ・リカールは販売量を明らかにしていないが、ウイスキーの販売が急激に伸びる中国市場に興味を示しているのは、ワインとスピリッツ販売で世界2位の同社だけではない。
英国のエディンバラ(Edinburgh)に本拠を置くスコッチ・ウイスキー協会(Scotch Whisky Association、SWA)によると、中国は2006年に前年比27%増の5820万ポンド(約140億円)に相当するのウイスキーを消費し、同市場で世界10位に入った。
米国のジム・ビーム(Jim Beam)、英国スコットランドのハイランド・ディスティラーズ(Highland Distillers )、マッカラン(Macallan)などのウイスキー販売を手がけるマキシアム(Maxxium)のStefen Deng氏は、「特にナイトクラブでウイスキーの消費が大幅に伸びている」と話す。 中国では、新興富裕層に見られるさまざまな現象と同様、酒類の選択においてもブランドを重視し、上流階級のスタイルにあこがれ、味わうよりもよく見られることに価値を見出す傾向がある。
なおシーバスリーガルは、ほとんどのナイトクラブで1本約500元(約8000円)で売られている。だがDeng氏は、「もはや価格の問題ではない。ウイスキーとコニャックには、あるオーラがある」と話す。
■嗜好品につきまとう「偽物」問題
一方、業界関係者の多くは、18年熟成のピュアモルトと安いスコッチの違いがわかる中国人はほとんどいないという。国内のバーやナイトクラブで「ウイスキーの冷たい緑茶割り」を飲んでいる若者をよく見かける。そして、多くの嗜好(しこう)品と同様、ブランドもののウイスキーにも偽物が出回り始めている。
ナイトクラブの経営者、密造業者、ギャングのメンバーなどの典型的な手口は、高価なウイスキーの空き瓶に普通のウイスキーを入れるというものだ。現段階では、中国のウイスキー市場における偽物の影響は、まだそれほど深刻ではない。しかし業界関係者らは、社会変化の激しい同国にあって、ウイスキーの将来は不透明だと語る。
国内誌「Food and Wine」の編集者、Fu Leibin氏は、「ウイスキー市場はダイナミックだが、磐石ではない。人々は常に新しいものを探し、最新の流行を追う傾向があるため、売上は今後も伸びるだろう。だが、成長率は鈍化するだろう」と予測する。(c)AFP/Philippe Massonnet