【ワシントンD.C./米国 19日 AFP】日産自動車のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)社長兼CEOは18日、ワシントンD.C.の米外交問題評議会(Council on Foreign Relations、CFR)で講演し、米国で1万ドル(約118万円)以下で購入できる小型車発売を「真剣に」検討しているとした。


■低価格車か、従来型高価格車か

 低価格車が日産から実際に発売されれば、北米市場で激しい価格競争を引き起こす可能性があるが、現在の最大の売れ筋は価格1万ドルを超えるピックアップ・トラックやスポーツ用多目的車(SUV)であるため、この戦略は日産の大きな賭けとも見られている。

 ゴーン社長は、米自動車企業がこれまで安価な小型車に対する需要を無視してきたと述べ、「われわれは低価格の小型車の市場投入を真剣に検討している」と語った。また、インドや中国の自動車企業が1万ドル以下の自動車を米市場に投入してくる可能性は充分にあると付け加えた。

 これに先だち同社長は前月、ルノー・日産(Renault-Nissan)連合が新規市場開拓を追及するインドを訪れている。インドではタタ自動車(Tata Motors)が、2500ドル(約30万円)の小型車の発売計画を最近発表したばかり。

■GMも小型車市場に参入

 2月の段階で、3月までの1年間の純利益が11%以上減少する可能性があると、利益予想の下方修正を行った日産は、全米の複数の工場に約1万6000人の従業員を雇用し、多様な車種の生産・販売を展開している。日産と提携するルノーは、すでに欧州で1万ドル以下の小型車を販売しているが、北米市場進出はまだ果たしていない。

 対する米自動車大手も、市場の風向きが変わりつつあることを察知しているように見える。国内販売がトヨタ自動車本田技研工業など日本車に押され低迷するゼネラルモーターズ(GM)は、前月インドで価格7300ドル(約86万円)前後の小型車「シボレー・スパーク(Chevy Spark)」を発売したが、北米市場で売られる車種のほとんどは現在でも優に1万ドルを超えている。

■合弁事業を積極的に推進

 ゴーン社長はまた、気候変動にたいする懸念と、技術の進歩により自動車業界が再編される可能性を指摘。日産・ルノー連合はインドや中国の自動車企業と強力な提携を結ぶ意欲があると語った。

 他方で「企業提携は有効な戦略だが、管理が難しい」とも述べ、国際的な自動車企業の統合には慎重な姿勢を示し、買収より既存の企業との合弁事業を推し進める方が好ましいとの考えを示した。

 今年1月、ルノー・日産連合は米国の自動車企業と提携して米国市場での展開拡大を模索していることを明らかにした。

■環境に優しいディーゼル車戦略

 ゴーン社長はまた、北米市場で環境に優しい車の需要が伸びている実態をふまえ、日産も3年以内に初のクリーンディーゼル車を北米市場に初投入する計画を発表した。まずは「マキシマ(Maxima)」にディーゼル・エンジンを搭載する予定で、日本、中国でも北米同様、2010年までに同様の車種を投入する計画だという。

 日産は同社のディーゼル・エンジンの燃費効率など、詳細情報は明らかにしていないが一般的にディーゼル車はガソリン車より燃費がよいとされている。

 写真は東京の日産本社ビルに掲げられた同社のロゴマーク(2007年2月2日撮影)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI