【8月29日 AFP】東京電力 (TEPCO)福島第1原子力発電所の放射性汚染水を保管している地上タンクから高濃度の汚染水約300トンが漏れた問題で、国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)は日本に対し、状況をもっと明確に説明し、混乱を招く情報発信を行わないよう要請した。日本の原子力規制委員会が28日、明らかにした。

 福島第1原発には汚染水を貯蔵するために約1000基のタンクが設置されている。その1つで前週発覚した汚染水漏れについて規制委は28日、事故評価の指標である国際原子力事象評価尺度(INES)で「レベル1」(逸脱)と当初していた評価を「レベル3」(重大な異常事象)に引き上げることを決めた。

 東電は、今回漏れ出た300トンの汚染水が、排水溝を通って太平洋に流出した可能性を認めている。

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震による津波にのみ込まれ、原子炉3基がメルトダウン(炉心溶融)した福島第1原発の事故は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」(深刻な事故)と評価されているが、IAEAは規制委に対し、メルトダウン以降に発生している様々な事態について個別の評価を下していない中、なぜ今回の汚染水漏れだけが評価に値するのかと疑問を呈した。

 規制委に宛てた文書でIAEAは、前週発覚した汚染水漏れは「汚染水の漏えいが関わる多くの事態の中で最新のもの」と表現し、「これまでの同様の事態については、INESに基づいた評価が下されたことがない中で、なぜ今回の事態を評価したがるのか、日本の規制当局はメディアと国民に対する説明を準備したいと考えているはずだ」と述べている。

 またIAEAは規制委に対し、今後、INES評価を頻繁に使用することは問題を不明確にすると警告した。その上で「可能な情報発信戦略の一つとしては、同様の事態が発生する中で個々の事態を評価する情報発信ツールとしてINESを用いるのではなく、そうした事態の安全上の重要性について説明するための適切な情報発信計画を練ることだ。そうすることにより、(最長で40年と見込まれている)廃炉工程の期間全体を通じ、INES評価で低いレベルの事態がおそらく長く続く中、メディアや国民に混乱を招く情報を発信することを回避できる」と忠告した。

 また、規制委の田中俊一(Shunichi Tanaka)委員長は28日、今回の汚染水漏れは「レベル3」と評価したが状況については依然、不明な点があると述べた。同委員長は、漏えいの量、汚染の度合い、流出先など正確な現状については把握されておらず、東電がさらに情報を開示した時点で評価を見直す必要があるかもしれないとしている。一方で、海外の報道には誤解もみられると述べ、「中にはINESについて正しく理解していない報道もある」と批判しつつ、情報が不足しており、規制委から十分な情報を提供できていないことを認めた。(c)AFP/Harumi OZAWA