【4月16日 AFP】前週12日にインドネシア・スマトラ(Sumatra)島沖で発生したマグニチュード(M)8.6の地震の際、活躍したと広く評価された津波警報システムが、実は観測機器が盗難に遭ったり破壊されたりして機能が大きく損なわれていることが、インドネシア国家防災庁の説明で明らかになった。

 1億3000万ドル(約104億円)をかけて導入された警報システムには験潮儀やブイ、地震観測機器などが含まれているが、AFPの取材に対し国家防災庁報道官は14日、以前から機器の盗難や破壊行為が問題となっていたと明かした。地震計による警報は機能しているものの、海上に設置したブイ25個のうち現在機能しているのは3個のみで、津波の高さを予測することが不可能となっているという。

 報道によれば、2008年に警報システムが導入されて以降、漁師たちが船を係留するためにブイを使用し、機器を破損させているという。

 インドネシア政府は現在、盗難や破壊行為を防ぐため、より水深の深い位置に設置する機器の開発を米国と協力して進めているという。

 一方、専門家によれば、2004年のインド洋大津波で約17万人が犠牲となったスマトラ島北部アチェ(Aceh)州では、前週の地震発生時に警報システムは正常に機能したという。だが、同州駐在のAFP特派員は、地震発生から45分後まで鳴らない警報サイレンもあったと伝えている。2004年の大津波は地震発生から15分後にアチェ州を襲っており、今回、住民らは地震直後に高台へと避難を始めていた。

 国家防災庁によれば、アチェ州にある6つあるサイレンの半数が正常に機能しなかったといい、うち1つは担当職員がパニックを起こして警報を発せずに避難したことが理由という。残る2つは、整備が行き届いていなかったため十分な音量が出なかったという。(c)AFP/Angela Dewan