【8月24日 AFP】スウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)で開催されている水問題の国際会議「世界水週間(World Water Week)」で22日、日本の学術専門家らが東日本大震災の検証結果を発表し、津波対策の検討では地元共同体の関与が大切だと訴えた。

 東京大学(University of Tokyo)生産技術研究所専任講師の川添善行(Yoshiyuki Kawazoe)氏は、大津波の被災後の街づくりでは地元共同体の参加が必須だと訴えた。

 3月11日の東日本大震災では、未曾有の地震と津波で東北沿岸地域の多くが壊滅的な被害を受けたが、川添氏が調査した岩手県大船渡市の吉浜地区では、ほとんどの住宅が津波被害を免れ、1人の死者も出なかった。これは、吉浜地区の自治体が大津波を想定した街づくりをしていたためだと川添氏はいう。

 川添氏によると、吉浜地区の住宅地は津波の到達地域よりも高台に建てられている。これは、過去の大津波被害の経験を教訓にして、吉浜地区が土地利用計画で津波到達の目安となる県道よりも高台に住宅を移転したことによる。住民たちも県道より低いところにある水田の被災はあきらめる代わりに、津波が届かない安全な住居を選んだ。

 川添氏は、東日本大震災を経験したいま、吉浜地区を教訓とした都市工学の再考が必要だと訴え、そのうえで堤防の高さや規模についてはコストの問題もあるため、地元共同体自身が決めるべきことだとの考えを示した。

 京都にある総合地球環境学研究所(Research Institute for Humanity and NatureRIHN)の谷口真人(Makoto Taniguchi)教授も、津波対策における地元共同体の関与の重要性を強調した。

 谷口教授は、国レベルでも地元の知識や経験を共有し学ぶことが必要だと訴えた。

 谷口教授は東日本大震災後に行ったRIHNの調査結果を紹介。同調査は、「津波の予防対策には、経済的にも社会的にも実現可能とはいえない巨大な投資が必要となる」と結論付けている。

 それゆえに、地元共同体の歴史的・文化的背景や生活習慣を把握したうえで、その共同体にとって将来的に可能となる選択肢を検討することが重要だと、RIHNは指摘し、社会と家庭の双方が一刻も早く生活を再建する余地をもてることが必要だと強調した。(c)AFP