【8月1日 AFP】40人の死者を出した高速鉄道の列車衝突事故をめぐり、中国国営メディアは1日、中国当局による「否定的な報道」の禁止命令に従った。中国では異例の当局に批判的な報道が、事故後約1週間にわたって続いていた。

 7月23日に中国東部・浙江(Zhejiang)省温州(Wenzhou)郊外で発生した中国で過去最悪の高速鉄道事故の報道は前週、各紙の1面を独占していた。中国共産党の機関紙、人民日報(People's Daily)さえ、中国に発展は必要だが「血まみれのGDP」は不要だとの記事を掲載した。

 だが、中国当局が7月29日に「肯定的な報道、もしくは当局の発表以外」の事故報道を禁止したことを受け、報道は様変わりした。

 国営紙「中国日報(China Daily)」は社説で、高速鉄道開発の「見落としを埋める」ことは重要だが、「中国製の技術全般の質に疑問を投げかけるような過剰な解釈は行き過ぎだ」と主張。「事故は管理体制の欠陥か信号系統の問題によって発生したのかもしれない。これらは許されないことである一方、いずれ是正される成長の痛みなのだ」と述べた。

 また、1日付の人民日報は、匿名の鉄道当局者の話として、事故の原因とされる信号系統の不具合は修理されたと伝えた。

■それでも批判記事載せるメディアも

 29日の報道統制を受け、一部の中国紙は急きょ紙面を差し替えたと報じられているが、週刊経済情報紙「経済観察報(Economic Observer)」は報道統制を無視する形で「温州に奇跡は無い」と題した8ページの記事を掲載し、1面には鉄道省のロゴを重ねた大破した列車のモノクロ写真を載せた。

 この写真の下には、列車事故から21時間後に救助され、両親を失った2歳の女児、項煒伊(Xiang Weiyi)ちゃんに宛てた手紙として書かれた批判記事が掲載された。「伊伊(この女児の愛称)ちゃん、君が大人になったときに」と題されたこの記事は、政府の事故対応を批判し、政府には透明性がなく、証拠の隠蔽(いんぺい)を図ったと批判している。(c)AFP