【7月26日 AFP】2010年に洪水で壊滅的な被害を受け、1750人の死者を出したパキスタンだが、その教訓を生かして予防策に投資することができないまま、今年も雨期を迎えつつある。

 国土の3分の1が水没した大洪水から1年、国際NGOオックスファム(Oxfam)は、水害に対するパキスタンの備えは依然、脆弱(ぜいじゃく)であり、復興や適切な住宅の建設、早期警告システムなどにもっと多額を投資すべきだと警告している。

 1947年の建国以来最悪となった2010年の洪水では、約2100万人が被災した。現在も数万人が避難キャンプに暮らしている。

 オックスファムが新たに発表した報告書によると、洪水の被害が最も大きかった南部シンド(Sindh)州では依然、3万7000人が避難キャンプ暮らし。全国では1年後の今も80万世帯が、適切な住居に欠いている。

 特にオックスファムが警告している点は、河川の堤防作りが進められてこなかったことだ。以前よりもさらに洪水に直撃されやすい状態で、今年のモンスーンに洪水が起きれば、200~500万人が被災すると見込まれている。

 オックスファム・パキスタン支部のネバ・カーン(Neva Khan)代表は「われわれの活動する地域の村人たちは、新たな洪水を怖がっている。多くの人びとが、洪水でだめになるのを恐れて、例年より少ない量の作物しか植えていない。場所によってはすでに洪水が始まっているところもある。そうしたところでは、再びすべてを失わないようにと、家財道具を片付けて高台へ引っ越し始めた家族もいる」と述べた。

 昨年の洪水では、パキスタン政府の対応が大きく批判され、他国が多大に緊急援助を行った。イスラム武装勢力の攻撃や政情不安による打撃をすでに受けていた国土で、畑や道路、学校、送電線、橋などすべてが流されてしまった。

 パキスタンに慢性的に巣くう腐敗もまた、国際社会に追加支援の拠出を警戒させた。おかげで「初期復興活動」に必要として国連が呼び掛けた支援金は、目標を6億ドル(約470億円)下回った。

 フランスの支援団体「Acted」も、パキスタン洪水1年を機にまとめた報告で、国際社会の注目がソマリアなど他の災害地域へ移ってしまった中、パキスタンは今も深刻に援助を必要としている、と指摘している。(c)AFP/Ben Sheppard