【5月25日 AFP】東日本大震災と収束にはほど遠い福島第1原子力発電所の事故を避け、いっときの平和と静けさを求めてはるばるアイスランドまでやって来た日本人ツアー客一行を出迎えたのは、火山の大噴火だった――。

 同国南東部のグリームスボトン(Grimsvoetn)火山が21日、眠りから覚め、地響きとともに噴煙を上空20キロの高さまで噴き上げたとき、11人の日本人旅行者たちは同国最大のバトナヨークトル氷河(Vatnajoekull)をハイキングしている最中だった。

「彼らはそりゃあ驚いていましたよ。こんな光景は生まれて初めてだったんですから」。ヘプン(Hoefn)で立ち往生している同ツアーのガイド、ビョルンソン(Hjalti Bjornsson)さん(54)は24日、AFPの電話取材に噴火の瞬間をそう振り返った。「彼らは、平穏を求めてここまで来たのです。そうしたら、これですよ!」

 ビョルンソンさんによると、一行が当時いたのは噴火口からは10キロほど離れた地点で、危険はなかったという。ほとんど無風だったため火山灰を浴びることもなかった。「ところが夜半になって風が強くなり、滞在しているホテルの周りを火山灰が吹き荒れたんです。22日の朝は、太陽が昇った後も辺りは真っ暗。1メートル先も見えない状態でした」

 ホテル内に足止めされていた数時間に、一行は窓から、小鳥たちが火山灰まみれになって死んでいく光景を目の当たりにした。数多くの火山の噴火を至近から目撃してきた百戦錬磨のガイドのビョルンソンさんでさえ、噴煙の中に閉じ込められるのは耐えがたい体験だったという。

 一行は、視界がいくぶん晴れたのを見計らって氷河の東側にある人口2000人の村、ヘプンへ脱出した。だが、後方は噴煙によって、前方は雪嵐のために道路が封鎖されていて、そこから身動きが取れなくなってしまった。

「まだ動けません。いつもなら、車で島を一周できるんですがね。北では大雪で20~25センチも積もっているそうですよ。南へも東へも行けません」とビョルンソンさんは嘆いた。

 とはいえ、火山付近で農家の人々が噴煙の中で行方不明になった家畜を血眼になって探し回っているのに比べれば、一行はヘプンのホテルでなかなか優雅に過ごしていると言えよう。「ここには青空が広がっていますからね」とビョルンソンさん。一行は、ヘプンの「ありとあらゆるもの」を見て歩いているという。「立派なプールもサウナもありますし、図書館や民俗博物館にも行きました」

 ところで、一行はいつになったら帰国できるのか? ビョルンソンさんは「待って、待って、待ち続けるだけです」とため息をついた。(c)AFP/Agnes Valdimarsdottir

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