【3月16日 AFP】東北地方太平洋沖地震による東京電力の福島第1原子力発電所の事故を受け、世界の気象学者たちは放射性物質の拡散に影響する原発付近の風向きを注視している。

 世界気象機関(World Meteorological OrganizationWMO)によると、福島第1原発で爆発が起きた12日と13日の風は、それぞれ北東と東に向けて吹いていた。原発から太平洋に抜ける方向だ。「この時の福島県沖の気象状況から判断すると、放射性物質は陸地の方向には拡散しなかったとみられる」と、WMOの防災プログラムの責任者は語る。

 だが日本の気象庁からの情報によると、15日は北東からの風に変わった。16日は地表付近と上空1000メートルでは、当初は北風だが後に西からの風に変わるとの予報だった。17日以降は、気象状況によって風向きは変動すると見込まれている。

 米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)のモデリング・プログラムを用いて放射性物質が飛散する可能性がある地域を予測した米国の気象学者、ジェフ・マスターズ(Jeff Masters)氏は、放射性物質のほとんどは日本の東北地方の太平洋岸にある福島第1原発から東の太平洋方向に拡散し、少なくとも5日間は太平洋上空を浮遊するとみているが、人体に有害となる放射性物質が7日間以上も大気中を浮遊し続けて2000マイル(約3200キロ)を超えて拡散する可能性は、ほぼないだろうとみている。

 一方、フランス気象局(Meteo France)予報部門のシリル・オノレ(Cyril Honore)氏はAFPの取材に、「日本は温帯に位置するため、風はおおむね西から東に向かって吹く。だが、気団(温度や湿度などがほぼ一定の空気のかたまり)や雲は何かに囲われているわけではないので、乱気流が起きれば垂直方向にも水平方向にも風の吹く方向に拡散していくだろう」と話し、放射性物質を含んだ微細なちりが福島第1原発から広範囲に広がる恐れがあると指摘した。(c)AFP/Anthony Lucas