【3月2日 AFP】ニュージーランド・クライストチャーチ(Christchurch)を襲ったマグニチュード(M)6.3の大地震の犠牲者が240人あまりに上る恐れも出ている一方で、多くの新しい生命が誕生している。

 クライストチャーチのカンタベリー(Canterbury)地区の保健当局によると、クライストチャーチ病院(Christchurch Hospital)の産科には地震が起きた2月22日以降の数日間に76人の妊婦が入院し、未熟児の対応に大わらわだという。

 クライストチャーチ病院はニュージーランド全土から助産師を集めているが、一部の新生児は北島(North Island)にある病院に転院させざるを得なかった。

 M7.0の地震があった昨年9月にも、地震発生後の24時間で新生児21人が生まれている。これは、土曜日としては同病院の最高記録となっている。保健当局は地震で陣痛が促進された可能性があるとみている。

■地震当日に出産した女性 「ただ感謝したい」

 クライストチャーチが地震に見舞われる数時間前、臨月を迎えていたジョー・ブラックマン(Jo Blackman)さん(34)は助産師から出産は数日先になるだろうと言われていた。

 だが大きな揺れが自宅を襲ったとき、ブラックマンさんは、とっさに息子のジョシュ(Josh)君(2)に覆いかぶさった。「自分が妊娠していることなど忘れていた。ただジョシュを守らなきゃとしか思わなかった」と、ブラックマンさんは地元紙フェアファックス(Fairfax)に語った。

 ブラックマンさんは、夫が帰宅してから、あらためて自宅を見回し、あちこちがひび割れていることに気づいたとき、突然、陣痛に見舞われたという。

 ブラックマンさんが、クライストチャーチ病院で娘のアリッサ(Alyssa)ちゃんを出産したのはその日の午後7時30分。病院には多数の負傷者が担ぎこまれ混乱状態にあり、市内各所では不明者の懸命の捜索作業が続けられていた。

 ブラックマンさんは、「多くの人びとが身内を失った悲しみにあるなかで、この世に新しい命が生まれたことを、ただ感謝したい」と語っている。(c)AFP