【6月29日 AFP】ハリケーンシーズンを迎えた米南部に今季最初の大型熱帯暴風雨「アレックス(Alex)」が接近しており、メキシコ湾(Gulf of Mexico)で続く原油回収作業が中断する恐れが出てきた。

 「アレックス」は流出原油が大量に浮かぶ海域を直撃はしない見込みだが、強風による波浪のため、水深1500メートルから原油を回収しているパイプに3隻目の船をつなぐ作業が中断する恐れがある。

 原油回収作業を指揮する米沿岸警備隊のタッド・アレン(Thad Allen)司令官は、フロリダ(Florida)州やルイジアナ(Louisiana)州沿岸に接近した原油が荒波によって湿地の奥にまで入り込み、生態系に影響が出ることを懸念している。

■ハリケーンシーズン突入で作業の遅れに懸念

 アレン司令官によると、機材を安全な場所に移動させるため、暴風雨が接近する少なくとも120時間前に撤収作業を始める必要があるという。また、暴風雨の通過後は、機材を流出現場に運び、再び設置作業から始めねばならないことから、作業は14日間ほど中断するとみられるという。

 英エネルギー大手BPが操業していた石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン(Deepwater Horizon)」の爆発・水没事故以来、約70日にわたって続いている原油流出を止めるためのリリーフウェルの掘削作業は9月までには終了する計画だった。だが暴風雨によって作業が遅れれば、流出する原油の量はさらに増える。

 現在の封じ込め作戦では、一日に3万~6万バレル流出しているとみられる原油のうち2万5000バレル程度を毎日、回収している。

 BPは28日、原油回収コストを3億ドル(約266億円)引き上げて26億5000万ドル(約2350億円)に上方修正した。これはBPが1時間につき400万ドル(約3億5000万円)を投入する計算になる。

 その一方で、BPは批判の矢面に立ち数々の失言が報じられたトニー・ヘイワード(Tony Hayward)最高経営責任者(CEO)が辞任するとの報道を否定した。(c)AFP/Allen Johnson